かこさとしさん

 福井県越前市出身の絵本作家かこさとしさん(加古里子、1926~2018年)が古里の野山で体験した遊びの記憶をたどったエッセー集「だるまちゃんの思い出 遊びの四季 ふるさとの伝承遊戯考」の文庫版が刊行された。かこさんの原点である自然豊かで人情厚い古里への思いが詰まった一冊だ。

 初版は1975年に刊行され、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。かこさん自身が「子どもの心になって」みつめた遊び46項目を文と絵でつづる。越前市に住んだのは東京に移る7歳までだったが記憶は鮮やかで、昆虫や植物、遊びの仕方を詳細に図解。四季の移ろいの中での遊びと四季を問わず行われた遊びがあり、かこさんの豊富な遊びの体験に驚かされる。全国のわらべ歌も添えられている。

 春は花や草占い。夏は小川で手ぬぐいを使って小魚すくいに熱中。秋には、はだしで駆ける原っぱでカゼクサなどを輪にした「くさわな」を仕掛けた。鉛色の雲に覆われる北陸の冬でも、子どもはたくましい。しめっぽく暗い家の中では、煮えたぎったヤカンの湯気で曇ったガラス戸の「ゆげえかき」を楽しみ、外では雪を全身で歓迎し、とことん遊び尽くす。

 かこさんが古里の野山を駆け回っていたころは、日本が軍国化され、戦争に突入する直前。子どもたちは「戦争ごっこ」に夢中になったが、戦地へ向かう兵隊の異様な雰囲気を幼かったかこさんは見過ごしていなかった。