「認定遺伝カウンセラー」として福井県内患者の遺伝カウンセリングも担当している西垣教授=福井県福井市の福井赤十字病院

 遺伝性の乳がんや卵巣がんを発症した患者を対象に、新たながんを防ぐためにがんではない状態の乳房などを切除する「予防切除(リスク低減切除)手術」が保険適用になって1年がたった。遺伝性がんの可能性のある患者が治療方針を決める際に重要なのか「遺伝カウンセリング」だ。福井県内でも徐々に取り組む動きが出てきており、福井赤十字病院(福井市)では専門家によるカウンセリングを受けた上で、予防切除手術が始まっている。

 2020年4月から公的医療保険の適用対象となったのは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の予防切除手術。遺伝子の検査による診断や予防切除手術を受けるかどうか治療法を決める際には、遺伝カウンセリングを行う体制があることが要件となっている。

 福井赤十字病院では20年9月に、厚生労働省が定める遺伝カウンセリングの施設基準を満たし実施している。遺伝専門医や非常勤の認定遺伝カウンセラーが遺伝性の病気の理解を促して治療の選択肢を説明。血縁者の病歴も聞き、遺伝子検査を受けるかどうかも話し合う。

 同病院によると3月末までに外科や産婦人科、腎臓泌尿器科でがんが見つかった10人超が遺伝カウンセリングを受けた。同病院は今年3月にHBOCの予防切除手術を院内の倫理委員会で承認。患者数人が予防切除を選択肢に入れているという。

 HBOCは乳がんのうち3~5%、卵巣がんでは10~15%といわれる。一般的ながんと異なり、遺伝子の生まれつきの変化が原因であるため、本人だけでなく遺伝子を共有している可能性のある血縁者にも関係する。そのため、検査を受けるかどうかも大きな決断だ。がん診療センターの乳がん看護認定看護師の吉川朋子さんは「価値観や家族構成、年齢など一人一人の背景を理解することが重要。本人が何を求め、何を大切にしているかを共有して、不安を取り除く選択肢を話し合っていきたい」と話している。

 ◇遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC) 「BRCA1」「BRCA2」と呼ばれる遺伝子に生まれつきの変異があり、乳がんや卵巣がん、膵臓がん、男性では前立腺がんの発症リスクが高いとされる。乳がん患者のうち▽45歳以下で発症▽2個以上の乳がん(片方の乳房で複数回、両側が乳がんなど)▽近親者に乳がんや卵巣がんと診断された人がいる▽男性の乳がん―などの特徴がある場合や、卵巣がん患者は遺伝子検査が保険適用となり、変異があった際にはリスク低減切除手術の対象になる。