【論説】福井藩の江戸上屋敷跡近くにある常磐橋が5月、東日本大震災からの修復工事を終え、10年ぶりに通行が再開された。JR東京駅周辺の再開発エリアで、これから注目のスポットになるとみられる。幕末に活躍した松平春嶽や橋本左内らが拠点とした福井ゆかりの地を、この機会にPR活動などに利用できないだろうか。

 常磐橋は江戸時代、江戸城の正門・大手門へ向かう外堀に架かっていた橋で、街の玄関としての役割も担っていた。残った石垣とともに国の史跡「常盤橋門跡」に指定されている。

 江戸時代は木橋だったが、1877年に石橋に架け替えられ、常盤橋から常磐橋に表記が変わったという。1923年の関東大震災、2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた。2度目の修復工事となった今回は、総事業費36億円を掛け、使われていた石材を可能な限り再利用して積み直した。約9年を費やして、文明開化期のモダンな姿をよみがえらせた。

 上屋敷跡には現在、ビジネスセンタービル「大手町プレイス」が立っている。ビルの広場に設置された福井藩の案内板と植えられた藩ゆかりのタカオモミジとウコンザクラが、福井とのつながりをわずかに伝える程度で、広く知られているとはいえない。

 常磐橋を修復した千代田区の樋口高顕区長は、5月下旬にテレビの情報番組に出演した際、橋について「数ある大名屋敷の中でも特に立派だった、福井藩江戸上屋敷近くに架かっていた」と説明した。千代田区から福井とのゆかりを発信してくれているこのチャンスを、次の展開につなげるべきだ。

 千代田区はこの夏をめどに、常磐橋の修復記念イベントを橋のたもとにある常盤橋公園で開く計画。具体的な内容はこれからというが、千代田区広報広聴課は福井県や福井市の参加を歓迎する意向を示している。

 広報広聴課長は坂井市シティセールス推進室長を務めていた林利夫氏。「福井と縁のある場所で、これをきっかけにつながりができれば」と語るほど交流に前向きであり、千代田区との連携を進める上で頼りになる存在になりそうだ。

 東京駅周辺で進む再開発事業の目玉は、高さ390メートルの「トーチタワー」。2027年度の完成を予定する日本一の超高層ビルは、東京の新たなランドマークになるのは間違いなく、常盤橋公園は常にイベントが開かれるような広場になる可能性がある。千代田区との関係構築を急ぎ、福井の情報発信に役立てたい。