コロナ禍による「孤独」が新たな社会問題になっており、日本でも英国に続いて孤独担当相が置かれ対策に乗り出しましたが、この長引くコロナ禍の生活になじめない女性や若者による自殺者が例年になく増加していると社会問題になっています。ここ福井県坂井市の東尋坊でも特に女性による自殺企図者の増加が見受けられ、5月中には3人の女性による自殺企図者を発見・保護しました。

■万引癖が治らず…

 5月下旬のある日、日没を迎えようとしている時間でした。小雨が降る中、傘もささず30歳代・女性が一人で岩場に向かって行く姿を発見したため思わず声掛けしました。相談所で話を聴いたところ、「小学3年生の時に適応障害と診断され、以来精神科医の入退院を繰り返しています。現在A型の障害者施設で働いていますが、万引き癖が治らず、これまでに5回ほど店員に見つかり警察沙汰にもなりました」と打ち明けました。

 女性は、万引きは悪いことだと分かっているものの、天から「盗っていい」と言う声が聞こえてきて盗んでしまうと言いました。今回も、天から「あなたが欲しいものは盗ってもいいよ…」とお告げがあり、スポーツジムで他人のバックから現金を盗んでしまったそうです。警察の取り調べを受けている最中で、このことで作業所のケースワーカーに相談しましたが無視され「辛くなり自殺しに来ました…」。女性は「天からのお告げ」を受けての万引き癖を克服することに困難を抱えていました。

■万引からPTSDに

 5月下旬の別の日の昼ごろ、海抜25メートル程ある崖っぷち付近で60歳代の女性が佇んでいたため声掛けしました。相談所で話を聴いたところ「7年程前にスーパーで万引きした時、6人ほどの店員さんに囲まれ、長時間責められる怖い思いをしました。それ以来、外出時には何処へ行っても誰かが付きまとって監視しているように感じ、毎日が辛く自殺を考えてきました…」。PTSDの精神障害になり、女性は苦しめられていました。

■上司と合わず自己嫌悪

 翌日の午後4時ごろ、30歳代の女性が遊歩道を元気なく岩場に向かって歩いていたため声掛けしました。女性はこう打ち明けました。「東京の有名大学を卒業し、医療関係の仕事に就いているのですが、上司であるドクターとの意見が合わず滅多打ちされ、自己嫌悪に陥りました。私の学歴が邪魔して、この世から消えたくなり自殺を考えて飛び込む場所を探していました…」。女性は厭世観に覆われていました。

■立ち直らせるために

 この3人の女性は、いずれも精神科医の治療を受けていた身でした。専門家の治療を受けていても、常に幻覚・幻聴に悩まされ、生きづらくなって “自殺”を考えてしまったのです。本人にとって、大きな衝撃を受けた時、心理的に①ショツク期 ②喪失期 ③閉じこもり期 ④再生期―が待ち構えています。ショックから立ち直るまでをいかに支えられるかがとても大切です。

 どんな事情があるにせよ、万引が許されるわけがありません。だから、自業自得だと言う人もいるでしょう。職場では、上司と合わないことも少なからずあることだと言う人もおられるでしょう。死にたいなら、死んでしまえばいい。そう思われるでしょうか。生きたいと願いながらも思うように生きられず、もがいている人たちにそう言えるでしょうか。人が心の傷を負ったとき、支えられる人間でありたいです。

   ×  ×  ×

 福井県の東尋坊で自殺を図ろうとする人たちを少しでも救おうと活動するNPO法人「心に響く文集・編集局」(茂幸雄代表)によるコラムです。

 相談窓口の電話・FAX 0776-81-7835