「南えちぜん山海里」で地元産品コーナーの運営団体代表とひじタッチする中川陽如さん(右)=福井県南越前町

 北陸自動車道上り線南条サービスエリア(SA)に隣接し、10月にオープンする福井県南越前町の道の駅「南えちぜん山海里(さんかいり)」。町が玄関口として整備するこの施設の地元産品販売コーナーを支援するのが、愛知県出身の地域ブランディングプロデューサー、中川陽如(あきゆき)さん(41)=福井県坂井市=だ。

 地元業者と考案した「山海里弁当」にはムカゴのごまあえ、昆布巻き、たくわん煮といった山、海、里の伝承料理がたっぷり。「食を通し資源豊かな南越前町が体験できる」自信作だ。

 これまで県内外100以上の生産者や団体のブランディングに関わった。その地域を徹底的に調べるのが仕事の流儀だ。「その土地を正しく、楽しく理解することで地域ブランディングに奥行きや深みが出る」

 福井の自然や食にほれ込み、移り住んで15年。「福井県の一番のファン」を自認し、その魅力を形にすることを仕事に選んだ。「福井マニアとして地域の価値を地域と共に創りたい」と屈託のない笑顔で語った。

 地域ブランディングプロデューサー、中川さんは地元愛知での大学時代、ベンチャービジネスに没頭した。2000年代初頭、IT系の若手起業家が台頭した時期。「どうやって効率的にお金を稼ぐかばかりを考えて過ごした」

 ある日、寝不足と過労がたたり、体が悲鳴を上げた。血尿が続き、死を意識した。この経験が生き方を見つめ直すきっかけになった。「お金だけを追求するのはなんか違うと思った」

 幼い頃から自然が好きだった。地域の豊かさを創造する仕事がしたくて大学院で地域経済や産業政策を学んだ。修了後、実践の舞台に選んだのが福井県。「旅行で訪れた時、自然と街のバランスが心地よく、湧き水や食材が断トツにおいしかったのが印象的だった」

 2005年に坂井市へ移住し起業を準備。翌年に農林水産物をインターネット販売するベンチャー企業「笑人堂(しょうにんどう)」を設立した。数年後、荒島岳の景観にほれ込み、大野市の七間通りの空き家に実店舗も開いた。県内外53人の生産者と連携し、約1万5千人の顧客を持つほどに成長した。

 続いて「福井の価値をもっと楽しく高めたい」と農林水産物の6次産業化や商品開発の支援にも乗り出した。魅力的なロゴマークやラベルの提案、ホームページや動画制作などの経験を積み、ブランド価値を高める今の仕事につながった。

 現在も道の駅「南えちぜん山海里」の商品開発支援のほか、複数のプロジェクトに携わる。このうち福井市の越前海岸で取り組んでいるのが、北陸新幹線県内延伸を見据え、滞在型拠点をつくる「サンセットヴィラプロジェクト」だ。

 リゾート整備構想を描く「ぱんだ不動産」(坂井市)とデザイン・建築の「マーレファクトリー」(福井市)をつなぎ、自身は総合プロデューサーを務める。「日没時の越前海岸の景観や地元の海の幸など、福井ならではの滞在の楽しみを提案したい」と意気込む。

 県内の女性と結婚し、小学5年生の息子がいる。すっかり福井に根を張った移住者の一人として、県民に望むことがある。「移住後によく聞いたのが『こんななんもないところ』いうフレーズ。福井ってすごい県なんだぞっていう言葉を聞きたい」