マスク会食徹底に向け福井県が配布を始めたマスクを受け取る飲食店従業員(右)=4月28日、福井県福井市中央1丁目のぼんた福井駅前店

 新型コロナウイルスの感染拡大に対する福井県独自の緊急事態宣言が出される中、客足が遠のいた福井県内の飲食業から「壊滅的な打撃」と悲鳴が上がっている。県は「マスク会食」を呼び掛け「経済との両立」(杉本達治知事)を図ろうと懸命だが、飲食店側には「お客さんに(着用を)強く求めることはできない」との戸惑いも見られる。

 「社交飲食業は壊滅的な打撃を受け、廃業を決意する事業者が増えている」

 県内の居酒屋やスナック、バーなどでつくる県社交飲食業生活衛生同業組合の友本正己理事長は5月10日、県庁を訪れて中村保博副知事に支援を迫った。

 友本理事長は「もはや休業要請してくれないか、という声も出ている」とも吐露。敦賀市でスナックを経営する三宅惠子副理事長は「福井の人はまじめだから、緊急事態宣言が出ると飲みに出てこない。休業要請で補償金が出れば、一時的でもしのげる」と打ち明ける。

 窮状は社交飲食業に限らない。越前市でそば店を営む60代男性は「夜の客入りが半減している上、緊急事態宣言で昼食時に使ってくれていたビジネス客もゼロになった」と声を落とす。飲食業界の支援策「GoToイート」食事券も新規発行が停止されており、「長引くと影響が出る」と早期再開を望む。

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 福井県内の感染状況はやや落ち着いているものの、近隣県は感染拡大に歯止めがかからない。京都府、大阪府は国の緊急事態宣言が5月末まで延長された。岐阜県内16市町には、まん延防止等重点措置が適用された。8日には石川県で80人という衝撃的な感染者数が発表され、同県幹部は「市中に感染が広がっている」と認めた。

 福井県の担当者も「大型連休の人の流れで県内の感染状況がどうなっていくのか、しっかり見極めないといけない。決して楽観的な見方はしていない」と説明する。13日までの緊急事態宣言の扱いについて「期限ぎりぎりまで状況を見た上での判断になる」と話す。

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 福井県は会話時のマスク着用とマスク会食の徹底を強く打ち出している。杉本知事は会見で「マスク会食をすれば、飲食もそんなに危険ではない。十分な感染対策を取りながら経済活動も回していきたい」と強調。浸透によって飲食業界のダメージを少しでも和らげる効果も期待する。

 休業補償や家賃補助を求める10日の組合要望に対して、中村副知事は「マスク会食推進のインセンティブになるような支援策を考えている」と理解を求めた。

 県はキャンペーンの一環として、県の「感染防止徹底宣言」ステッカーを掲示する飲食店約3千店にマスクを200枚ずつ配布している。ただ、4月末にマスクを受け取った居酒屋の店長(40)は「声掛けしてもお客さんが嫌がったら、それ以上のお願いは難しい」と明かす。福井市の繁華街「片町」でバーを経営する50代男性は「そもそもマスクを配るほどの客が来ない状況を分かってほしい」とため息交じりに語った。