弱った木を診断・治療する「樹木医」の籔内昭男さん(58)=福井県坂井市=に、治療までの流れや木を扱う仕事の面白さを聞きました。
■大敵はキノコ
―どうやって木を診断するんですか。
まず木全体を観察します。葉の色や大きさ、しおれているか枯れているか。幹や根なども見ます。次に、日当たりなど、木が植えられている環境を見ます。土の性質や含まれる栄養分は後日検査することもあります。それらの情報から木が弱った原因を突き止めます。
―どんな原因が考えられますか。
樹木の大敵はカビやキノコ。特にキノコは、何年もかけて徐々に木を腐らせます。木が元気なうちは木の勢いが勝つので腐る部分は広がりませんが、弱ってくるとどんどん広がります。そのほか害虫の被害や、排水が悪いことによる根腐れなどもあります。
―人が原因のときはありますか。
直接の原因はカビやキノコでも、拡大する要因を作ったのが人であることは多いです。例えば、多くの人が通って根元の土が踏み固められると木は弱ります。根の呼吸に必要な空気が届かなくなり、根が伸びるのに必要な隙間もなくなるためです。枝切りのしすぎや、工事で根を切ったことが原因で弱ることもあります。
■大木は治療に時間がかかる
―どんな治療をするのですか。
例えば、虫がついたなら農薬の出番。また、土の下に水がたまって根腐れしているなら、水が速やかに流れていくような工事が必要です。キノコが木を腐らせているときは、木がスポンジ状になった部分を取り除き、あとは特殊な樹脂で固めて、腐る部分が広がるスピードを抑えます。一人でできない作業は造園屋さんに頼みます。
―仕事の苦労は?
一番困るのは、診断したとき既に木が完全に枯れているときです。完全に枯れた木は絶対に生き返りません。松くい虫の被害で多いのですが、見た目は「ちょっと様子がおかしい」程度でも、枯れていることがあります。
―木を相手にする面白さは?
時間軸が人の世界と違うこと。木の場合、芽生えて、育って、枯れるまで、100年、200年といった時間軸で考えます。木を植えたのが今の持ち主のおじいさんや、もっと前の人のこともあります。それが普通にあるというのが面白いです。
―治療も長い目で見るんですか。
大木ほど、木が弱る症状が現れるのも、治療の効果が出るのもゆっくりしています。木が弱る原因になったのが20~30年前の出来事であることや、治療効果が出るまで数年かかることもあります。多くの場合、治療後、しばらく悪化した後に回復します。長いスパンで見ていく必要があります。
次回インタビューするのは、読みたい本を探す手助けをする県立図書館の司書、田中智美さん。質問を募っています。投稿フォームから送ってね。締め切りは5月16日です。話を聞きたい県内の職業や人も募集します。