(1)今年4月中旬の日暮れ時、30代の男性から電話で「クレーンの免許を偽造し会社に提出して土木の仕事をしていましたが、偽造したことがバレてしまい、以降、過酷な仕事を強いられました。それで体調を崩してしまったために退職することを決意し、菓子箱と退職届を宅配で送ったところ、社長から『今の仕事には命が掛かっている。絶対辞めさせない! 辞めたら公文書偽造をしたことについて警察に訴え、工事の遅れについて損害賠償を請求するからな…!』などと脅かされました。私は妻子のいる身であり、父親が前科者だと言われるのが可哀そうだと思うので自殺します…」。相談を受けた私は男性を呼び寄せて話し合い、公文書偽造については自首することを決意させて警察の介入をお願いしました。

 この男性犯罪を犯した場合、刑法第42条により自首した場合、その刑を軽減するとあります。一方、雇用主は無免許であることを知りながら仕事をさせられており実害はなく、相手から受けた各種の脅迫の方が重大犯罪だと思われます。

(2)今年4月下旬の昼過ぎころ、ゴールデンウイーク初日で一日中雨が降り続いていましたが、雨の中、ずぶ濡れになった50歳代の男性が軒下で雨宿りをしていたため、相談所で話を聴いたところ「父親の紹介で運送会社で3年ほど働いていますが、9か所の会社を訪問して荷物を運ぶ仕事を毎日12時間以上 (月100時間以上の超過勤務) 働く過酷な仕事をさせられており、3月ころから睡眠不足が続いています。4月に入ってから3回ほど貨物を落下させるなどの大失敗をおかしてしまい会社に大きな損害を負わせてしまいました」と打ち明けました。

そして続けて言いました。「もうこれ以上、仕事は続けられず、父親から紹介された会社であることから労働基準監督署に訴えることもできず、妻に『すまん…!』と一言メールを送り、自殺するため昨夜、山梨県にある青木ヶ原樹海へ行きましたがパトロールが強いため自殺できず場所を変えて東尋坊で自殺するつもりで来ました。しかし降雨の中を岩場に近づいたところ、親子連れの観光客に声をかけられたことから飛び込めずにいました…」。家族からは自殺する恐れのある家出人として捜索願が出されていたため警察のお世話になりました。父親から紹介された就職先でしたが「命」あっての物種です。 我慢にも限界があるはずです。

 新型コロナ禍の影響によるためか、今年4月に入って彼らを含め5人もの自殺企図者と遭遇しました。この自殺するに至った理由を聴きますと、精神的に追い詰められ、逃げ場を無くして長時間悩んだ末の逃げ場が “死“ 。「死後」の世界など考える余裕は無く、ただひたすらに目の前のあらゆる出来事に疲れ果て、どうしようもなくなり、何も考えたくなくなり、ともかくこの心の痛みから逃げて楽になりたいとの思いで “逃避” した姿であったと思います。周囲にひと声かけてくれる人がいて、救いの手をさしのべてくれたなら、彼らも東尋坊に来る前に生きる道を選べたかもしれません。コロナ下にあって他人を思いやることが難しい現実に直面されている方を少なくないでしょう。でも、ほんの一握りの優しさが人を立ち直らせる大きな力になることを忘れてほしくないです。