2021年3月に行われた県立高一般入試の受験会場の様子。現在の中学3年生から、私立高と同じ2月に実施される

 福井県教委が2022年度の県立高一般入試の実施時期繰り上げを発表し、現在の中学3年生から私立高と同じ2月に行われる。授業料の実質無償化などで、県内では私立を第1志望とする生徒が増える一方、県立の志願倍率は1倍前後で推移している。今回の変更は、新型コロナウイルスの影響だけでなく、県教委の私立人気への危機感が背景にあるとみる関係者は多い。

 「学校の施設が充実し、大学の指定校推薦枠を多く持っている私立が良かった」。4月に福井市内の私立に専願で入学した女子生徒は、県立進学の選択肢はなかったという。県立出身の母親(48)は「授業料も無償化となり、子どもの選択肢が広がった。かつてのように“絶対県立”の時代ではない」と言い切る。

 県大学私学課のまとめによると、私立5校(全日制)を第1志望とする推薦、専願入学者は授業料無償化前の19年度は1628人だったが、20年度は288人増の1916人、21年度(3月末現在)も1804人と推移。各校の進学コースが専願のみの募集になったことも志望者の増加につながっている。併願を含めた全入学者は定員(1948人)を超え、2年連続で2千人を超えた。

 これに対し、県立の志願倍率は20年度、全県1学区制を導入した04年度以降、初めて1倍を切った。21年度も1・01倍となっている。

 県教委は、今回の変更を新型コロナの感染拡大に備えた対応と説明するが、嶺北のある県立高関係者は「私立への流れを食い止めたいという意味合いの方が大きいのではないか」と指摘する。嶺北の中学関係者も「受験勉強は苦しいため、早く入試が終わる私立に飛びつく生徒もいる」とした上で、「(県教委は)中学生の進路の選択肢から県立を外さないようにしたいのではないか」と推察した。

 県教委のある関係者は私立人気に対する危機感を認めた上で、地域の高校の魅力向上が急務との認識を示す。県高校教育問題協議会(県高問協)は昨年6月、羽水や金津、勝山、敦賀など地域の普通科12校の魅力向上策を提言。県教委は難関大を目指す生徒の学習を支援するため、「県大学進学サポートセンター」を設置するなど底上げに本腰を入れている。

 先の中学関係者は「県立と私立は、授業料でも入試日程でも同じ土俵に立った」と強調。生徒はどの高校に行きたいかを本気で考えるようになるとし、「県立は魅力的なカリキュラムなどを発信する努力が必要となる」と指摘した。