西方ケ岳山頂付近からの敦賀湾。対岸の向こうに白山が浮かんで見えた

トクワカソウ

 道中のほとんどで海が見える登山道だからか、登頂までの約2時間はあっという間だった。福井県の敦賀半島のほぼ中央、敦賀市と美浜町境に位置する西方ケ岳(さいほうがだけ)=764・1メートル。山頂近くの大岩から、しばし真っ青な敦賀湾に見とれた。

 居合わせた越前町の男性が「今日は、白山と別山がきれいに見える」。指さす方に石川県境の霊峰が白く輝いていた。「白と青のコントラストが最高ですよね」の問いかけに、うなずくほかなかった。

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 市中心部から敦賀湾西側の県道を北上し、常宮神社近くに登山口がある。4月中旬にしては暑い日で、出発して間もなく汗がにじみはじめたが、海からの風がすっと乾かしてくれた。

 20分ほどで「奥の院展望所」に到着。花こう岩の大岩によじ登ると、遮るものは何もない。敦賀湾は港から中心市街地まで見渡せる。岩の上は真っ平らで、思わず体育座りをしてパノラマ動画を撮影した。わずかな時間で到達できるとは思えない絶景の展望所だった。

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 道中も大きな岩が次々と転がっている。山頂までのほぼ中間地点に「銀命水」の立て札があり、岩の隙間からちょろちょろとわき水が流れ出ていた。ピンク色のトクワカソウやイカリソウをめでながら進むと「常宮のオウム岩」に到着。江戸後期には評判だったことや、「呼び掛けるとよく応える」という名前の由来を知るのも楽しい。

 白山を教えてくれた男性は「蠑螺ケ岳からは水島がきれいに見えますよ」とも。手持ちのガイドマップではさらに約1時間かかるとある。出発に手間取って出遅れたのを悔やみ、再訪することを誓った。

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 “下界”の「密」を避けて、越前若狭の山へ。それぞれの山で出合った「疎」の楽しみを紹介する。

 【ヤマメシ】⇒ おぼろ昆布ごはん

 敦賀湾を見ながら、地元名産のおぼろ昆布を食べようと決めていた。アルミ製の小型飯ごうをバーナーに載せ、ご飯を炊く。炊きあげに15分、蒸らしに10分。炊きたてを、おぼろ昆布でくるんで口に運んだ。酢と昆布のうまみで、1合のご飯はあっという間に完食。湾内を白波を立てて進む船に、江戸時代に北海道から敦賀に昆布文化をもたらした北前船を重ねながら、先人の足跡に感謝した。