ワーク・ライフバランス社社長の小室淑恵さん

 福井県は幸福度ランキング1位とのことですが、持ち家率の高さや待機児童率の低さなど、ライフ面のストレスはすごく抑えられているということだと思うんです。ワーク(働き方)の面で誰もが主体的な選択をして生き生きと働けているかというと、まだまだこれからなのではないか。

 課題としては、残業を前提としたような仕事のやり方と、育児や介護など女性に多くの役割を担わせる性別役割分担意識。首都圏への女性流出が多い地域に共通しているのが、性別役割分担意識の強さだという調査結果もある。都会へのあこがれではなく、女性が活躍しにくい地域性が人材流出につながっている。

 今求められる働き方、幸福の形は、以前とは違う。社会の変化を認識する必要がある。会社に時間を無制限に侵食されることを阻止し、誰もがサスティナブルな働き方、生き方ができてこそ幸福度は上がる。

 生活のストレスが低い福井が「もう一歩」を踏み出すことができるなら、テレワークの人にとって移住先としてすごく魅力があるはず。大チャンスだと思います。

 ―社会はどう変化したのか。

 人口構造が変化しました。日本が経済成長をした1960~90年代は労働力に恵まれた「人口ボーナス期」。安い人件費で均一な商品を大量生産できた時代。高齢者が少なく社会保障費がかさまず、利益をインフラ投資に回せた。

 残業や転勤を課し、ついてこれない人をふるい落とす根性試しのような「お前の代わりなんかいくらでもいるんだよ戦略」が通用した時代。男性が戦士として社会に出て、女性が家を守る価値観が根付いた。

 今は違う。少子高齢化の「人口オーナス期」。労働力が足りないので男女とも最前面で働き、育児や介護中でも仕事と両立できる環境を整え、人材を確保する。人件費が高いため、残業せず短時間で成果を生む。

 消費者のニーズは多様化している。多様な価値観の人が組織の中で交わり、イノベーティブな発想で商品やサービスを生む必要がある。考え方が同質で働きづめの男性組織では柔軟なアイデアは生まれない。人口ボーナス期の成功体験を引きずらず、マインドチェンジをしないと生き残れないのです。

 ―働き方改革は個人や家庭に何をもたらす。

 熱を出したわが子を誰が病院に連れて行くか、会社に気兼ねして両親が育児を押し付け合う姿を見ると、子どもの自己肯定感は低くなってしまう。その姿を見て育った世代にしてみれば、将来子どもをもうけることは恐怖です。

 自治体は少子化対策として「カップリングだ」「出会いの場をつくろう」とすぐ言うが、ナンセンス。残業せずに帰宅して家族で幸せな食卓を囲める状況、子どもが病気になったら安心して会社を休める当たり前の社会をつくることこそが「こんな家庭を再生産したい」「自分も子を持ちたい」という価値観を養う。

 第1子が生まれた際、夫が帰宅時間が遅く家事や育児に関わる時間が短い家庭ほど、孤独な育児がトラウマになり、2人目以降が生まれないデータもある。長時間労働を是正しなければ少子化は解決しないのです。