閉じ込められていた猫が保護された無人の住宅=東京都武蔵村山市

Evaに連絡がきたのは、3月13日の午後。「東京高円寺のコインパーキングに駐車している車中に、3日前から犬2匹が閉じ込められている。警察や行政に通報しても取り合ってもらえない、どうしたらいいか」といった内容でした。

すぐ現場に駆け付け確認すると、車内には黒い柴犬と、おそらく子犬と思われる小さなプードルがいました。後部座席には自動給餌器がありましたが、赤ランプが点灯していたので餌は切れていたと思います。水は確認できませんでした。

すると、そこに若い男性がやってきて「SNSでこのことを知った。なかなか助け出されないから、僕はこれから車の窓を割って助け出す。そしてそのあと警察に行きます」と仰いました。私は「『ガラスを割りたい』その気持ちはすごく分かるけど、それをしたら器物損壊罪になってしまう。何とかこちらでも、できる限り動くので少しだけ待ってもらえませんか」と伝えました。

と、そこに警察官が数名来たので、「何日前から給餌・給水されてないか分からないが、このままでは命に係わるので救出してほしい」「この方は犬を救うために、窓を割ると言っている。動物に心を寄せる善良な市民を犯罪者にさせないためにも、早急に鍵を開ける、もしくは窓を割って保護してほしい」と伝えました。また、今起きていることは、動物愛護管理法第44条2項にある「給餌給水をやめ」「その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し衰弱させる」状況であると説明しました。

その後、管轄の部署に直接電話をしてもらえないかとのことだったので、杉並警察署の生活安全課に電話し、同様のことを伝えました。警察からの返答は「飼い主とは連絡が取れているので対応している」とのことでした。ですがその後も事態は一向に動かず、時間とともに小さなプードルの動きが次第に弱ってきているように見えました。

車の窓ガラスは指先がやっと入るくらい開いていたので、「脱水症を起こしているかも知れないから、そこからストローで給水させてほしい…、その隙間から餌を入れさせてほしい」と懇願するも、警察官から断固として止められました。飼い主の持ち物の車を守るというのなら、飼い主の持ち物である犬も守るべきですし、しかも物ではありません。命です。死んでからでは遅いのです。

ですがそのまま、押し問答が繰り返され、時間だけが無情にも過ぎていき、膠着状態が数時間続きました。その間、ありとあらゆる人に連絡を取り、杉並警察署に電話していただきました。

その後、夜の8時半過ぎ、おそらく飼い主から預かったであろう車の鍵を持った警察官が来て鍵が開きました。「カチッ」とロックが外された音にどれだけの人が安堵したことでしょう。その後、警察官が車内に入り2匹は警察署に保護されました。私が現場に到着しておよそ4時間半後の保護でした。

●無人宅、猫20数匹閉じ込め

東京武蔵村山市で一人暮らしのお婆さんが亡くなったのは3月16日、死後数日経過していたそうです。お婆さんは猫20数匹と住んでいたのですが、お婆さんのご遺体が運び出された際、なんと猫はその住宅に閉じ込められてしまいました。私に連絡が来たのは4月の頭なので、閉じ込められてから既に半月が経っています。

通報者が「猫が閉じ込められているから何とか息子さんに連絡をとって猫を救出してほしい」と市役所に連絡するものの「常識的に考えて四十九日までは連絡はとれない」「口外するな」「指示を待て」と言われていました。その後、市の職員が「連携してる団体と動いている」と言ったため、通報者も地元の愛護団体も経過を見守っていました。ですがその後連携している団体は全く存在していないこと、そして現場から1匹も引き出されていないことが分かりました。その時点で3週間が経過していました。とにかく一刻の猶予もありません。もう既に亡くなっているかも、中で共食いが起きているかも…、そんな思いで地元の警察署に動物虐待事件が現在進行形で起きているので刑事事件として取り扱ってほしいと連絡しました。

ですが、それは行政の役割だから刑事事件として扱わないとの返答です。その後、国会議員事務所にお願いし、市や東京都、警察に連絡してもらいましたが「自分たちには立ち入り権限はない」と言われました。そして地元団体には「息子は2日に一度、餌を与えに来ているから大丈夫」「窓にいた猫は元気そうだから問題ない」とし、4月13日に現場に入ると伝えられました。ですが、門扉の内側に貼られた養生テープは少なくとも3日は剥がされていません。閉じ込められてから3週間以上経過しているのに、さらに6日後まで待てる訳がない…。そう思った矢先に、一番恐れていたことが現実になりました。窓越しに猫の遺体を発見したと写真が送られてきたのです。

消えそうな命の灯を私たちは指をくわえて見ているしかないのでしょうか。ですがこれ以上死なせる訳にはいかない…そう思った私たちは、その翌日深夜に杉並区の猫の保護団体「高円寺ニャンダラーズ」と共に現場に向かいました。たくさんのフードとポリタンク満タンに入れた水とともに。ですが驚いたことに現場に到着すると、行政と警察の捕獲作業が既に取り行われていました。おそらくその日の午後、「猫の遺体があった」「警察と行政が現場に来たけど中には入らず帰って行った」とその都度進捗を伝えていた国会議員事務所から、行政と警察に強い要請があったことで真夜中の捕獲に至ったのだと思います。

車内閉じ込めも屋内閉じ込めも人為的問題です。

犬が車中に取り残された事案は、幸運にも雷を伴う激しい雨が降った寒い日でした。結果4時間半で救出されましたが、夏だったらどうでしょうか。日本自動車連盟(JAF)のテストによると、外気温35℃の状況下で、昼の12時に黒い車両が窓を閉め切りエンジンを停止させたら、30分後には車内温度は約45℃、1時間後には55℃まで上昇するそうです。

また屋内の閉じ込めの場合は、車中と比較すると建物内部の様子が外から確認しづらいケースもあることから、更に見つかりづらく状況が悪化します。給餌給水がされてない上に車中同様、外気温の高い日中は室内でも熱中症を引き起こします。

武蔵村山市の事案は、行政が「2日に一度餌を与えているから問題ない」と取り合いませんでしたが、保護された猫は飼育環境が悪いことから免疫力も低下し、口内炎を患いよだれを垂らしていた猫が多数いました。例え餌があっても口内の痛みで食べることが出来ず、餌を前に餓死したのだと思います。

動物虐待罪は、昨年6月に、殺傷罪は5年以下の懲役または500万円以下の罰金に。一方虐待罪として、給餌給水をしない、安全を保持することが困難な場所に拘束されている、衰弱している、疾病や負傷したものに対し適切な保護を行わない、排せつ物が堆積している、他の愛護動物の死体が放置されている場所で飼養するなどといった不適正飼養に関しては、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に引き上げられました。

ですが、今まさに目の前で動物虐待が行われていて、その動物を救おうとしても、動物虐待罪が適正に運用されません。それどころか目の前にいる動物を当たり前に救いたいと思った人達が、扉や窓を壊したら器物損壊、敷地に入ったら不法侵入、動物を保護したら窃盗罪となってしまうのです。全国でこのような事案が多発するたびに、議員に泣きつき解決の糸口を探るしかないというのが現状です。ですがそのやり方で救えるケースもあれば、私たちの耳に入ることもないまま時間だけが過ぎ、現場の動物を死なせてしまうこともあるでしょう。もし、閉じ込められているのが犬ではなく、人間の子どもだとしたら、同じ対応をとるでしょうか。

そういった現場の動物を迅速に救うため、今私たちEvaは、緊急で保護が出来る制度作りが待ったなしで必要だと実感しています。所有権の壁があるならば一時的に所有権を停止させる。何よりもそこに置かれている動物の状態がこれ以上悪くならないよう滞りなく救出できる仕組み作りです。動物を死なせてしまった飼い主や事業者をのちに刑事告発することはできますが、何より死なせてしまうのだけは絶対に避けたい、死んだら戻ってこないのです。
私たちEvaは虐待現場からの動物の緊急一時保護と所有権の停止を今後の使命として果たして行きたいと思います。

それと同時に、普段の生活の中で車内に子供や動物を置いてその場を離れようとしている人を見かけたら、どうか勇気を出して声掛けをしてください。「このまま放置したら熱中症で死んでしまいますよ」「動物虐待になってしまうので置いていかないで」。もし2名以上いるなら「1名は車に残ってもらえませんか」とその場でお話ししていただきたいです。人がいない場合は、夏季なら命に直結し一刻の猶予もありません。即110番通報してください。

屋内の閉じ込めも同様です。人の気配はないが動物は確認できる、郵便受けがいっぱいである、また悪臭や騒音、ねずみなどの衛生動物の発生などが、中で異常事態が起きているかもしれない重要なサインです。もしかしたら、屋内で飼い主さんが倒れていることも考えられます。人を救うためにも異常を感じたら、警察に通報してください。その後の対応の良し悪しは別として、通報し現状確認をしてもらうことが重要です。

動物虐待を見逃さない、あなたの勇気が動物のいのちを救います。

Youtube動画「Evaチャンネル」でも、閉じ込め事件について触れています。そちらもあわせてご覧ください。

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今回のEva通信は、当協会Eva代表理事の杉本彩と共に、日頃活動しているEva事務局長の松井が、実際に対応した動物虐待事件についてお伝えしました。