【越山若水】「原稿ちゅうのはな。ダーッと聞いてきてダーッと書けばいいんじゃ」。駆け出しのころ受けたある先輩の助言?である。「ダーッとですか」「おう、ダーッと」。少なからず困惑した▼当時は地方面を担当。初めてトップ記事を任され、不安から書き方を尋ねたことへの答えだった。今になって良い方へ解釈すれば、人見知りで前に出るのが苦手な筆者の性質を見抜き、励まそうとしてくれたかもしれない。よく分からなかったが肩の力だけは抜けた▼人に教えるというのは常に悩ましい。新社会人の研修が真っ盛りだが、とりわけコロナ下はマスクで表情が見づらく、顔を覚えるのに時間がかかり、人となりを知り合う飲み会もできない。担当する人たちは手探りだろう▼「右肩上がりだった時と違い、今は次の方向が見えない。だから試行錯誤こそが大事」。慶応大特任准教授・若新雄純さん(若狭町出身)の言葉である。何げないが時代を鋭く言い当てて、ずっと印象に残っている。もはや経験から未来を語れないとなると、年長者が若者を指導することはいよいよ難しくなる▼教え方の正解を示す能力がないが、せめて言えるのは、押し付けをせずに話をよく聞くこと、だろうか。あすは二十四節気の「穀雨」。作物を育てる優しい雨が降るころ。この慈雨のように、若者たちの希望を明るく伸ばせる道を探りたいもの。