福井地方裁判所・家庭裁判所=福井県福井市

 衆議院で審議中の、18、19歳の少年の厳罰化を図る少年法改正案で、従来通り全事件を家庭裁判所(家裁)に送る仕組みが維持された。家裁では、心理学や社会福祉学などの専門家である調査官が少年との面接や試験観察を通し、事件の背景や立ち直りについて検討し適切な処分につなげている。福井家裁の調査官は「非行少年と向き合い、更生への『レシピ』を作る仕事。少年と信頼関係を築き、事件と向き合わせることで、本人が自発的に変わろうと思えるよう心掛けている」と話す。

 調査官は、少年事件を家裁が受理すると少年や保護者と面接し、非行の要因や再非行防止に向けて何が必要かを見極める。少年を理解するため家庭、学校への訪問や心理テストなども行い、多角的に検証する。

 処分決定後も、地域社会が立ち直りを支える存在となるよう関わるのも調査官の役割。福井家裁の男性調査官(33)は「裁判所の手続きの中で少年とじっくり向き合うのが調査官。更生に向けた課題や必要な教育を見極め、児童相談所との連携や少年院への橋渡しなどを担えるのが大きなやりがい」と話す。

 家裁に送られてくる少年の中には「大人への不信感があるような子も多い」と男性調査官。同僚の女性調査官(27)は「最初は私たちと視線が合わず思いを言葉にすることも苦手な子で、保護者もしかることが中心となっていて、親子間のコミュニケーションが不足しているケースもあった」と振り返る。

 最終的な処分決定前に行われることがある試験観察は長いときは半年に及び、定期的な面接で信頼関係を築きながら少年の自発的な行動を促していく。先の親子のケースでも、子どもは試験観察の中で少しずつ自分のしたことを自分の言葉で話せるようになり、保護者も課題に気付くことができ、親子関係の改善にもつながっていったという。

 家庭環境や心の葛藤、身体的なコンプレックスなど非行の要因はさまざまで、それぞれが複雑に絡み合う。子どもの発達段階に応じた適切な親の関わりも大切な要素で、男性調査官は「子育てが難しいと感じるのはごく普通のことで、支援機関を頼ることも大切。子どもと向き合い続けることが必要だ」と感じている。

 女性調査官は「子どもたちが事件の責任を自覚し、被害者の心情を理解して変わろうと思うためには、気持ちを素直に言葉にして振り返ることが重要」と指摘。「これからも少年の話を丁寧に聞き、感情をしっかり受け止めることを意識していきたい」と話す。

 【家庭裁判所調査官】心理学や社会学、社会福祉学、教育学などの専門的知見や技法を活用し、非行少年の立ち直りに向けた調査活動や家庭内の紛争解決に関わる。仕事の中心は当事者との面接で、裁判官は調査官の調査結果を基に処分を決める。各専門分野を学んだ学生らが採用され、2年の研修を経て行動科学などの理論や法律知識を身に付ける。全国の定員は1596人で、福井県内には福井家裁、同敦賀支部に計8人が配置されている。