【論説】菅義偉首相とバイデン米大統領との初の日米首脳会談がホワイトハウスで行われた。最大の課題である中国を念頭に一層の同盟強化を確認。会談後の共同声明では台湾情勢を巡り、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調した。

 日米首脳が台湾に言及するのは、日中国交正常化前の1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領の会談以来で、それ以降は封印してきた経緯がある。台湾を「核心的利益」とし譲れない問題とする中国を強くけん制する会談となった。

 一方で共同声明には、中台の「両岸問題の平和的解決を促す」とも記された。中国による台湾侵攻などが起きれば、沖縄は無論、本土までもが戦禍に巻き込まれかねない。日本にとっては偶発的な衝突を避けるためにも、米国にも自制を働き掛け、緊張緩和を促す狙いが見てとれる。

 中国は2020年代後半にも米国を抜いて世界一の経済大国になるとみられている。バイデン氏は中国を「唯一の競争相手」と称し米中対立を「21世紀の民主主義と専制主義の闘い」と位置付けている。人権や法の支配などを対立軸に据えるだけに、「自国第一」だったトランプ前政権に比して対立は深刻化しかねないと指摘される。

 中国と地理的に近く、軍事的な海洋進出の活発化など、米中対立の最前線に置かれる日本に必要なのは、一触即発の事態を回避し、地域の安定を図る独自の外交戦略だろう。ただ、菅政権からは一貫した対中戦略が見えてこない。日米同盟の抑止力を生かしつつ、中国との対話を進めていくべく知恵を絞る必要がある。

 在米中国大使館の報道官は日米首脳の共同声明について、台湾や香港、新疆ウイグル自治区などに「深刻な懸念」を示したとして、「強烈な不満と断固とした反対を表明する」との談話を発表した。今後、具体的な行動を伴うかは見通せないが、中国も日本を米中間を取り持つ仲介役として期待している側面もあるだろう。中国は日本の最大の貿易相手国だけに、経済摩擦は何としても避けたい。

 バイデン氏は米国の防衛義務を定めた日米安保条約第5条の沖縄・尖閣諸島への適用や、北朝鮮による日本人拉致問題の即時解決にも言及するなど、日本への配慮を示した。これに対して菅首相は防衛力強化や米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の推進を約束したが、米国側はさらなる応分の「負担」を求めてくることも想定すべきだろう。

 経済分野で半導体のサプライチェーン(部品の調達・供給網)構築で協力を確認したのも脱中国依存を進めるものだが、どこまで応じていくのか、日本側の対応が問われよう。