産卵し本格的抱卵に入ったとみられるコウノトリの雌(左)と雄=4月8日、福井県越前市下中津原町(同市提供)

 福井県越前市と福井県は4月16日、同市坂口地区に飛来した国の特別天然記念物コウノトリのペアが、下中津原町の人工巣塔で産卵し、本格的な抱卵に入ったとみられると発表した。同地区内での野外コウノトリの産卵は初めて。里地里山の保全に長年取り組んできた住民たちは、待望の繁殖を喜んでいる。

 ペアはいずれも兵庫県豊岡市生まれで、雄が1970年に福井県越前市白山・坂口地区に飛来した「コウちゃん」のひ孫。雌は2019年に同県坂井市で別の雄と繁殖した個体で、県内で58年ぶりとなる野外ひなの巣立ちにつながった。

 越前市によると、3月23日に2羽そろって坂口地区に飛来。同月下旬から人工巣塔で交尾行動、巣作りが見られていた。4月7日から産卵が始まり、巣に伏せる時間が長くなったことから、8日に本格的抱卵に入ったと推定した。

 約50年前に飛来したコウちゃんは、下のくちばしが折れて餌がうまく取れず、児童や住民らに保護された。今回飛来した雄がひ孫だと知った住民たちは、15年以上前から地区内に増やしてきたビオトープで餌をついばむ姿を温かく見守り、繁殖への思い入れを強めていた。

 産卵の確認を「待ちに待っていた」と話すのは、坂口地区にある同市エコビレッジ交流センター主任の野村みゆきさん(61)。「これまでコウノトリの通過点でしかなかったけれど、やっと滞在して繁殖してくれるまでになった。巣立ちへ夢が膨らむ」と声を弾ませていた。