「奇跡の一本松」の種から成長した松の木と澤田さん=3月31日、福井県鯖江市別司町

 東日本大震災の津波に耐えた「奇跡の一本松」(岩手県陸前高田市)の松ぼっくりの種から育った松の木が、福井県鯖江市別司町の棚田跡ですくすくと成長している。3年前と2021年1月の大雪を乗り越え、樹高は現在約5メートルになった。青空に向かって、青々とした葉が茂る枝を伸ばしている。

 松の世話をしている澤田半壽郎さん(78)=鯖江市=は、11年7月に復興支援ボランティアとして陸前高田市に入り、「一本松」の根元に落ちていた松ぼっくり約50個を持ち帰った。紙袋で保管していたところ翌春、種が100粒ほどあるのを見つけた。

 「育ててほしいと頼まれているような気がした」という澤田さん。その年の夏、トレーに種をまくと見事に発芽。その後、自宅近くにある自分の棚田跡に移植して苗木に育てた。このうち33本は名勝「高田松原」の復興を願い、16年に陸前高田市に寄贈した。

 苗木は知人にも分けたが、最も弱々しかった1本だけ棚田跡に残した。棚田跡は04年福井豪雨で土砂被害を受け、コメ作りができなくなった土地。澤田さんは、豪雨復興の思いも重ねながら松の木の生育を見守った。

 約5メートルに成長した松の木は、幹の下半分に枝がない。「奇跡の一本松」をほうふつとさせる姿に、澤田さんは「新型コロナウイルスで社会全体が苦しんでいる今、この木に勇気づけられている思いだ」と語る。

 「奇跡の一本松」は6月に岩手県内を走る東京五輪聖火リレーのルートに組み込まれている。澤田さんは「多くの人に一本松に関心を持ち続けてほしい」と話している。