【論説】「デジタル庁」の創設を柱としたデジタル改革関連法案が衆院を通過し、参院での審議に移った。与党は国民の暮らしの向上につながるとして早期可決、成立を目指している。

 改革関連法案は新型コロナウイルス禍でマイナンバーカードを通じ一律10万円を配る給付金を巡り、手続きが滞ったことがきっかけとなり、菅義偉首相の看板政策として浮上。理念を定めた基本法案やデジタル庁設置法案、個人情報保護法改正案など約60本で構成される「束ね法案」だ。

 マイナンバーカードは政府の「デジタル社会へのパスポート」との掛け声や、最大5千円分の「マイナポイント」が受け取れる制度などで、ここに来て普及率が上昇しているという。ただ、それでも26・3%(3月1日時点)と4人に1人をわずかに上回る程度。福井県内では23・5%と全国平均を下回っている。

 その理由としては利便性が実感できないことなどが挙げられる。普及に弾みをつけるとみられていた健康保険証としての活用も、不具合が相次いだことから3月下旬からの本格運用が10月に延期された。利便性の問題以外にも、国民や県民に、国家による監視や統制強化への懸念が拭えないからではないかとの指摘もある。国会でも審議が進むにつれて、こうした負の側面が明らかになってきた。

 第1は個人情報の保護だろう。これまで民間と行政機関、独立行政法人ごとに分かれている情報保護の法律を1本に統合。政府は個人情報保護委員会が行政機関などの監視・監督も担うため、今以上に情報保護が担保されるとしている。

 しかし、行政機関に「相当な理由」があるときは、本人の同意なしで個人情報の提供や目的外利用が可能な点は変わらない。加えて民間に対しては保護委員会に認めている是正のための「命令」権限が行政機関に対してはなく「勧告」にとどまっている。改革でこれまで以上に個人データの利用や国への集中が想定される中、プライバシー保護への国民の不安は高まるばかりで改正案は十分とは言い難い。保護委員会の権限強化などを検討すべきだ。

 個人情報保護では自治体が国に先行してきた経緯があるのに、平井卓也デジタル改革担当相は「いったんリセット」し全国的な共通ルールに改めるという。共通化により保護規制が弱まる恐れがある。制度上の十分な配慮が求められる。

 2021年度のデジタル関連予算は3千億円。マイナンバーではこの9年間で8800億円を投じながら普及、利用とも進まなかった。その反省を踏まえ、今後の経費急増などに対する具体的な歯止めも国会で論じる必要があるだろう。