足羽川堤防沿いの桜を楽しむ下村さん親子=3月26日、福井市中央3丁目

 3カ月の三女を抱っこした福井市の下村千智さん(32)が、5歳の長女と3歳の次女と並んで足羽川堤防の桜並木のトンネルを歩く。「きれいだね」とはしゃぐ娘たちの姿を、目を細めて見守った。

 新型コロナ感染第1波のさなかだった昨春も、足羽川の桜を見上げた。身ごもったばかりの時期で、小さな命を案じながら「来年は(赤ちゃんを含め)みんなで見ようね」と言い聞かせた。この1年は桜を心の支えにしてきた。言葉通り、娘3人と一緒に花見ができた喜びをかみしめている。

 2・2キロにわたり薄桃の花の帯が続く名所。下村さんも幼い頃から親しんできた。中学生の時は友人と自転車で訪れ、最近では子どもと散歩するのがお決まりとなっている。

 「1月の大雪がうそみたいに暖かくなって桜が咲いて…。春って幸せ。温かい気持ちになる」。いつの間にか寝息をたてて眠る三女の顔を、そっとなでた。

 今年も桜の季節が巡ってきた。足羽川の堤防周辺には、さまざまな思いを胸に集う人々の姿があった。

 間隔を空けた家族や友人の数人のグループがあちこちに点在する、福井市の足羽川堤防周辺。例年は付き物だった大人数の宴会は、ほとんど見られない。

 花見客に目を向けながら、甲斐敏夫さん(85)=同市=が1人、マイペースで歩いていく。マラソン歴は50年近く。数年前までは堤防沿いの約4キロを往復でジョギングするのが日課だった。今は時間を見つけては散歩で汗を流している。

 花見のにぎやかな雰囲気が好きで「去年は人がいなかったから寂しかった。やっぱりこの季節が一番いいね」と笑う。満開の桜とともに体を動かせる幸せを感じている。

 娘たちと毎年訪れている下村さんは、子どもは旅行や遠出など特別なことに喜ぶのだと、以前は考えていた。「近くにこんなにすてきな場があって、子どもたちは大喜びで。十分幸せなんだなと思うようになった」

 花見に来ると、下を向いて草をむしるばかりだった3歳の次女が、しっかりと桜を見るようになった。1年の成長を感じている。

 99年の歴史がある九十九橋近くのレストラン、ピリケン本店は、店内から桜並木が間近に楽しめるロケーションが有名だ。毎年、桜の時期は団体客が1日300人訪れていたが、昨年は新型コロナ感染拡大を受けた外出自粛でゼロだった。

 今年は、お客さんが桜を眺めながらゆっくり食事を楽しむ、いつもの光景が広がる。中山浩成社長(45)は「桜って人間が未知のウイルスに右往左往していてもお構いなし、必ず春になると咲くんですよね。自然の力ってたくましい」

 どんな時代でも変わらず、本格的な春の訪れを告げる桜。昨年の外出自粛などの経験を経て、今年はより多くの人が日常にある幸せを実感したことだろう。