鉛の濃度とスギ花粉症の関係について説明する坂下雅文講師(右)と藤枝重治教授=3月30日、福井県永平寺町の福井大学松岡キャンパス

 福井大学と名古屋大学の共同研究グループは3月30日、スギ花粉症患者は鼻の中の鉛の濃度が高く、くしゃみなどの症状を悪化させる一因であると発表した。会見した福井大学医学部耳鼻咽喉科の藤枝重治教授と坂下雅文講師は今後、ほかにも悪化させる物質がないか研究し、症状を軽減する薬の開発や対応策につなげたいとしている。成果をまとめた論文は今月、米医学誌の電子版に掲載された。

 大気汚染物質の鉛や水銀、カドミウムなどの重金属は、ぜんそくのリスクを高めるとされている。研究グループは大気汚染物質がスギ花粉症に与える影響について調べた。

 2016、17年に、福井県内のスギ花粉症患者44人と花粉症ではない人57人を対象に、花粉飛散前後の鼻汁を採取。鉛などがどれくらい含まれているかを計測、比較した。

 花粉飛散前は両者の鉛濃度に差はなかった。花粉が飛散している時期には花粉症患者の鉛濃度が花粉症ではない人より1・5倍高かった。患者に症状を聞き取ったところ、鉛濃度が高いほど1日のくしゃみの回数が多く、鼻づまりの程度が重い傾向が見られた。一方で、水銀やカドミウムなどは検出されなかった。

 症状悪化と鉛濃度との関連性を裏付けるため、マウスを使った実験を行った。アレルギー性鼻炎を持つマウスと健常マウスを準備し、鉛を鼻に投与。10分間のくしゃみと鼻をこすった回数をそれぞれ調べた。鼻炎を持たないマウスは投与後も変化がなかった一方、鼻炎を持つマウスはどちらの回数も4~5割増加した。

 さらに、投与から24時間後にマウスの鼻汁の鉛濃度を測定。鼻炎を持つマウスは健常マウスの4・3倍高い濃度を示したことから、坂下講師は「鼻の中で炎症が起きていると鉛が残りやすく、それが症状の悪化につながると考えられる」と説明した。

 調査では、鼻汁を採取する1~4日前の花粉飛散量と鉛濃度に相関関係が見られた。ヒノキやシラカバなどほかの花粉を調べたところ、鉛が付着していたことから、坂下講師は「マスクで花粉の吸い込みを防いだり、鼻うがいで洗浄したりする基本的な対処は大切。症状を軽減する薬の開発に役立つのではないか」と強調。藤枝教授は「鉛を除去する空気清浄機など、新しい対応策をつくっていければ」と話した。