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 ベネチア映画祭金獅子賞、トロント映画祭観客賞、GG賞…今年のアカデミー賞レースを独走している。その評価にもちろん異論はない。監督は、西部劇『ザ・ライダー』のクロエ・ジャオ。彼女に至っては無双状態で、監督賞は作品賞以上にテッパンだろう。

 気鋭の女性ジャーナリストによるノンフィクションを原作に、遊牧民(ノマド)として季節労働の現場を渡り歩く女性をフランシス・マクドーマンドが演じるロードムービーだ。実際のノマドたちが本人役で出演し、マクドーマンドが彼らのコミュニティーに入り込んで撮った生々しい肌触りが最大の特徴。彼らは俳優としては素人なのに、その中にプロであるマクドーマンドが奇跡のように溶け込んでいるのだ。

 にもかかわらず、本作はドキュメンタリーのように撮影された作品ではない。画面の構図も光も完全にコントロールされているから。夜の、月明かりを模した寒色の光と、赤みを強調した人工照明の暖色が織り成す美しいコントラスト、人物の自然な動きを正確に追ったカメラワーク…。もちろん撮影監督の功績も大きいが、この“作り込まれた生々しさ”こそ、クロエ・ジャオがこれほど高く評価されている理由だろう。個人的には、劇伴(BGM)を多用し過ぎてせっかくの現実音が生かされていないことが不満だが、オスカーを狙うには、これくらいの観やすさ=エンタメ性がちょうどいいのかもしれない。★★★★★(外山真也)

監督・脚色・編集:クロエ・ジャオ

出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン

3月26日(金)から全国公開