おっと。純度100%ときましたか。なんか意外、というのが第一印象だった。純粋とか清純とか純潔とかを連想させるフレーズが書籍のタイトルに入るとは思っていなかったから。

 とか知ったような口をきいてますけど、「弘中ちゃん」ことテレビ朝日アナウンサー、弘中綾香のことが好きな、ただのいち視聴者でしかありませんからね。どういうところが好きなの?と聞かれても明確には答えられないんですけど、えーと、顔が可愛いから?面白いから?アナウンサーっぽくないから?弘中ちゃんがっていうか彼女が出演する「激レアさんを連れてきた。」が好きだから?全部当てはまるような気もするし、どれも違うような気もする。そもそも弘中綾香とはどんな人なんだろう。なんだか掴みどころのない彼女のことが知りたくて、本書を手にとった。

 マガジンハウスのウェブメディア「Hanako.tokyo」での連載をまとめた本書。エッセーや対談、なぜかコスプレコーナーまで、てんこ盛りの内容だ。まず驚かされたのがその文章量。「フォトエッセー」と銘打っているんだからフォトとエッセーで構成されていて、場合によっては写真がメインのことが多いのに、文章がみっちり掲載されている。仕事のこと、友人のこと、インドへ旅行に行ったときのこと、給料で買ったお気に入りのグッズ、そしてエッセーを書きたいと思ったきっかけなど、日々の出来事やそれについて感じていることを書いている。

 「急に文章が書きたくなった。

 いや、書かなければ私の中の何かが壊れる、という衝動につき動かされている。なぜなら、本当の私がこの世から無くなりそうだから。」

 「所信表明」と題して書かれたこの文章は、2019年5月の連載第一回目に書かれたものである。弘中は当時を思い返し、テレビに出て脚光を浴びた反動で、視聴者から好き勝手に言われていたときの心境を「有名税という免罪符で向けられる全ての矢が心に命中し(略)ストレスでふさぎ込んでいた」と語る。どうにか現状を打破したいと考えた彼女は、文章での自己表現を思いつく。「ただ、私はこういう人となりなんだ、というのを自分の言葉で伝えたかった」と。

 だから、取り立てて「いいこと」や「いい自分」を描いていないのが印象的だ。披露宴が苦手で、犬が苦手で、スタッフに何百個もチョコレートを用意するバレンタインを忌み嫌っている。が、習慣を止める勇気が出せず今年もチョコレートを求め奔走してしまう。心のどこかで「結局みんな他人だ」と思っており、「誰かに期待しないこと」を心がけている。テレビ朝日に入社した年に2020年のオリンピックが東京に決まり、そこが自分のひとつの集大成になるはずだと信じて突き進んできた。だから今、何を目指したらいいのか迷っている……。

 決して熱いわけではない。どちらかといえばクール。だけど、自分がどんな人間なのかを伝えたいという気持ちは強い。好かれても嫌われてもいい。だけどテレビに映るほんの一部分だけを切り取って好きだ嫌いだと言われるのは心外。だから、私の話を聞いてほしい、そう毅然と訴えているような一冊だ。等身大、というと陳腐な表現だけど、書ける範囲のことを自分の気持ちに一番近い言葉を探しながら書き上げたエッセーは、思った以上に一生懸命。メディアに出る人間の個人的な揺らぎをきちんと言葉にできる賢さと勇気に、そして純度は極力100%に近づけようとする真面目さに、やっぱり弘中ちゃん好きだなと思ったわけでした。

(マガジンハウス 1800円+税)=アリー・マントワネット