岸壁の上に放置された釣道具など(2021年2月、福井県越前町)

「敦賀海保日誌」では釣りにまつわる海の事故を多数紹介してきましたが、その中でも最も多いのが陸から海への転落事故です。先日、釣りにまつわる事故の発生が疑われる内容の通報をいただき、敦賀海上保安部から巡視艇などが出動する事案があったのですが、少し問題点を含んだ案件であり、このことについてみなさんも一緒に考えてほしいのです。

2月中旬の昼頃、「福井県越前町内の漁港の防波堤で朝まで釣りをしていた男性の姿が見えなくなった。防波堤にはクーラーボックスや釣道具などが置かれたままなので、事故かもしれない。」と、現場の近くに住む男性からの通報がありました。
通報を受けた警察や敦賀海上保安部は、放置された釣道具の持ち主が海に転落している可能性もあることから陸上捜索班と巡視艇が出動し、行方不明者の捜索にあたることに。

到着した海上保安官が現場を確認したところ、竿受けに立てられたままの釣竿、使いかけのまま置かれた釣エサ、灯標に掛けられている上着・・・。周りには誰もいません。
ついさっきまで誰かがそこで釣りをしていたような現場の状況から、事故発生の危機感が高まります。

当日の海はかなり荒れていて、波の高さが4~5メートルにもなるほどの大時化。出動した巡視艇は相当過酷な状況の中、現場近くの海域に急行します。

海上保安官たちが現場での対応にあたっていたところ、放置された釣道具の持ち主の友人であると名乗る男性が現場に現れました。その男性から「持ち主は場所取りのために釣道具を置いて一旦自宅に帰ったんじゃないか」との情報があり、その後、釣道具の持ち主の男性と連絡をとることができたので、現場に戻って来てもらいました。

釣道具の持ち主の男性が現場に到着して、放置された道具がその人のものであることが確認できたので、男性に詳しい事情を聴いたところ、

「昨日からこの場所で友人と2人でイカ釣りをしていて、午前0時頃に一旦釣りを止めたが、釣り場がとても良く、また同じ場所で夜からイカ釣りを再開しようと考え、場所取りのために釣道具を置いておき、そのまま車で1時間ほど離れた自宅に帰っていた」

ということで、事故や事件などによるものではありませんでした。

いかがでしょうか?

釣りを中断された深夜から通報が入った12時間以上もの間、釣道具が防波堤の上に放置されていたということになります。
通報された地元の方から見れば、事故を疑うのは当然ですし、そのような異変を見つけて即座に通報をしていただけたということは、人命救助の観点からとてもありがたいことです。

それに、結果として人命に何の支障もなかったということは喜ぶべきことですが、なんだかモヤモヤしてしまいます・・・。

「釣道具を防波堤の上に放置して場所取りをする行為」

私自身も趣味で釣りをするので、このようにして釣り場を確保される方がいることは知っています。立入禁止場所や私有地、占有地などである場合を除いて、防波堤や岸壁の上は基本的に公共の場所としてその多くが開放されているので、きっと釣り場所として使う場合は“早い者勝ち”になることが多いのではないでしょうか。

ですが、足しげく通われて馴染みのある場所では、自分の場所のように占領して使われている方が少なからずいるようで、トラブルに発展するというケースも耳にします。

今回のように海辺に放置された釣道具などから事故の発生が疑われ、持ち主の捜索に当たった結果、その場を離れていただけであったというケースが少なからずあります。

しかしながら、実際に海中転落などの事故であったというケースも多々あるので、海保としては必ず捜索などの対応に当たります。最終的には、釣り人のモラルやマナーという話になるのでしょうが、みなさんには海保がこのように対応しているということを知っていただきたいんです。

あなたは、どう思われますか?

そして、心当たりがある方は行動を見直してみてください。

“必ず当たる”からといって、公共の岸壁で“領域展開”して釣りをするのは、フィッシャーマンとして考えもの。

はっっ!また流行に乗ってうまいこと言う術式を使ってしまいました!すみません。楽しく安全なフィッシングライフを。(敦賀海上保安部・うみまる)