矢地第一工場3階にある原料保管室。「主原料保管棚(劇薬)」「ア行」と書かれた棚の下段にイトラコナゾールが入ったドラム缶状の容器(黄色の丸)があったが、誤って上段の四角い容器(赤矢印)に入った睡眠導入剤成分の塩酸リルマザホンを混入した

 製造する爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入し、200人を超える健康被害を出した福井県あわら市の小林化工では、国の承認書と異なる製造工程や二重帳簿の作成が長年にわたり横行していた。「会社の説明は不十分と感じる。膿を出し切ってほしい」。同社の製造現場を知る関係者たちが、福井新聞の取材に対し“自社ルール”がまかり通っていた工場内の実態を語った。

 ■五十音順で棚の上下に

 睡眠剤の混入があったのは、抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」の一部ロット。関係者によると、2020年6月23日の夜勤帯に若手社員が1人で作業し、原料を混合する工程で原薬のイトラコナゾールをつぎ足そうとして取り違えた。

 つぎ足しは承認書にない違反行為。さらに“裏”の手順書で、実際の作業の記録も記入する「現場フロー」に、取り違えた睡眠導入剤成分のリルマザホン塩酸塩水和物のつぎ足しを示すロット番号が書き込まれていた。混入量は488グラムで、4錠飲んだ場合、睡眠剤として使用する最大投与量の10倍に達した。

 イトラコナゾールとリルマザホンは、原料保管室の同じ「ア行」の棚の上下に置かれていた。イトラコナゾールの「イ」と塩酸リルマザホン(リルマザホン)の「エ」で、近いためとみられる。

 同社は今年2月の記者会見で、昨春からバーコードによる在庫管理システムを導入していたが、混入した睡眠剤は記録されていなかったと明らかにした。同社幹部は「まだ完全に運用されておらず、読み取っていれば取り違えに気付いた可能性がある」と述べた。しかし関係者は「承認外の行為だから、あえて読み取らなかったのではないか」と指摘する。

 ■研修と全く違った

 関係者は、ほかにも問題がある事例が数多くあったと指摘。ある錠剤の製造中に、別の原薬の粒が混ざり「作業員を集めて、手やふるいで混入した粉体を取り除いた」ことがあったという。同社は会見で「全製品の製造工程と品質試験結果の調査で、イトラコナゾールの混入ロット以外では他成分の混入はないことを確認した」と答えている。

 このほか、工場内では錠剤にする工程(打錠)で、欠けるなど不具合が出た場合は一度粉砕して「つなぎ」の材料を入れ直し、再度打錠したケースも。また、定められた場所とは違うエリアで製造したり、製造機器の使用記録にも不記載や改ざんがあったりしたとしている。

 県は同社の違反事項の詳細について公表していないが、これらの行為は医薬品医療機器法違反に当たる恐れがあるとする。関係者は「本来やってはいけないことで、大丈夫かと心配になった。現場では入社時の研修と全く違うことが行われていて、不審に思う社員もいた」と憤った。