DeNAとの練習試合で2ランを放つ阪神・佐藤輝明=宜野湾

 これぞ金の卵である。プロ野球阪神のドラフト1位、佐藤輝明の評判がすこぶるいい。

 キャンプを訪れた評論家の10人が10人とも高評価を与えるのは珍しい。

 ともかく大きい。187センチ、94キロの鍛え抜かれた体は、何年もプロの飯を食ってきた選手のようだ。

 1月の新人合同自主トレの際に行われた体力測定では、握力が右76・1キロ、左73・5キロ。立ち幅跳びでも281センチでいずれも新人トップだった。

 鋼の肉体と驚異の身体能力から放たれる打球は、これまた新人離れしている。

 衝撃のデビューは2月9日に行われた日本ハムとの練習試合だった。

 1回に右前打を放つと、5回には日本ハムの2年目右腕・鈴木健矢のスライダーを右翼ポール際に技ありの一発。さらに7回に決勝打となる右への二塁打も記録した。

 5打数3安打3打点の内容は文句のつけようがない。

 偵察に来た広島の岩本貴裕スコアラーは「(ソフトバンクの)柳田(悠岐)に似ている」と高評価。近大時代から「ギータ2世」と呼ばれていた片鱗をのぞかせた。

 とんでもないパワーを見せつけたのは16日の楽天戦。バットを折った打球がぐんぐん伸びて、あわや右翼スタンドに飛び込むかと思われる大ファウルとなった。

 この怪力ぶりには両軍ベンチもびっくり。過去に折れたバットで本塁打を記録した選手は松井秀喜(巨人)、松中信彦(ダイエー)、吉田正尚(オリックス)、柳田らが名を連ねる。

 早くもそんな「怪物伝説」と比較されるあたりに、佐藤のスケールの大きさが見て取れる。

 18日のDeNA戦では、バックスクリーン越えの特大弾を含む2本塁打4安打の固め打ち。

 21日の広島戦まで5試合連続安打。23日のDeNA戦で連続試合安打は止まったが、この間の対外試合の打率は4割8分。井上一樹ヘッドコーチは「現時点では頭一つ、二つ出ているかな」と、レギュラー定着に太鼓判を押した。

 本塁打ばかりに目を奪われがちだが、巧みなバットコントロールも併せ持つ。

 内角低めの変化球に対して、左肘をたたんで対処。ツーストライクと追い込まれても、ファウルで逃げながら四球を選ぶ選球眼の良さもあるから投手にとっては厄介だ。

 その上、走塁や三塁の守備でも評論家から合格点をもらっている。現時点では走攻守に不安はない。

 近大時代にリーグ新記録となる14本塁打を放ち、ドラフトでは4球団競合の末、阪神入団が決まった。

 近年のドラフト1位野手と言えば高山俊(2015年)、大山悠輔(16年)、近本光司(18年)と続くが、彼らを凌ぐ魅力が佐藤にはある。

 右投げ左打ちでいえば掛布雅之。大学出の大物といえば岡田彰布や田淵幸一ら「ミスタータイガース」の系譜につながる。

 今のところ定位置は「3番・三塁」だが、このままシーズンに入っても快進撃が続くようなら、チームの顔になる日も早晩やって来るだろう。

 黄金ルーキーの加入で、激しいレギュラーポジション争いが展開されそうだ。

 腰の痛みで出遅れた大山は、昨年28本塁打の主砲で、三塁に戻れば佐藤は右翼へ回る可能性が高い。

 その外野陣も近本とJ・サンズがいて、新外国人として昨年韓国で47本塁打、135打点を記録したM・ロハスを獲得。さらに復活を期す糸井嘉男、高山らがいる。

 佐藤次第では、大山やサンズの一塁コンバートもあり得る情勢だ。

 いずれにせよ、優勝を狙う矢野燿大監督にとっては嬉しい悩みに違いない。

 首脳陣にとって、佐藤の活躍はキャンプ当初の願望から期待に変わり、今では確信になりつつある。

 もちろん、このまま快進撃が続くわけではない。他球団からのマークは厳しくなり、打撃面で壁にぶつかることもあるだろう。

 しかし佐藤には、それを承知の上で使い続けたくなるほどの輝きと抜群の存在感がある。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。