◆雪の下の野菜たち

 ようやく二月の中旬にもなると、一面雪、雪、雪であの大変だった私の畑の雪もほとんど融けて、雪の下で冬を越した野菜たちのその姿が、雪の重みでつぶれたままの姿ながら全面現れてきました。

 一月下旬、あの大雪も一旦は落ち着いたかと思える頃、むしょうに大根おろしが食べたくなりました。畑にはまだ大根がいくらか残ってはいるのですが、あの雪を掘って、雪の下から大根を掘り出してまでの労力を思うとちょっと自信がなく、スーパーに行った方が早道と、すぐに車を走らせました。スーパーには、とても太くて大きく、瑞々しくておいしそうな大根が思いのほか安くに売られていました。早速一本買って帰って、長芋と一緒におろして、梅酢で味付けしていただきました。しかしです。一口食べてみて食べたいとイメージしていたのとは少し味わいが違うのです。

 いつも自分の畑で採れた大根を食べているのでその味に慣れていたせいもあるのでしょうか。食べたいとイメージしていた大根おろしは、雪の下で清められ、少しピリッとした辛さの中にも、十分な甘さのある清浄感に満ちた味わいの大根おろしだったのです。

 やっぱり掘るしかないのか…。でもあの雪の下、実際掘れるだろうか…と、不安な思いもありながら、それでもスコップをもって畑に出かけました。畑の周りは、除雪車によって除雪された雪が高く積み上げられたままで、まだ何の手も入らず、動物の足跡さえもないままの雪野原です。

 大根が植えられている場所の見当はつくので、まずは道路のわきに高く積まれた雪に登るための階段付けから始めました。そして、雪の積もり具合を確認しながら一歩、一歩、雪を踏み固めながら畑に足をおろしていきました。見当をつけて雪の中にスコップを入れて静かに掘っていきました。かなりの雪をどけた後、ようやく土が見えてきました。葉らしきものも見えているので、スコップで傷をつけてしまわないようにそっとまさぐるようにスコップを動かすと大根らしきものに当たる感触がありました。手でその大きさを確認して、これはと思う大根を掘り上げていきました。

 その時、突然「わたしのパンを食べている者が、わたしを足で踏みつける」という言葉が突くように出てきました。「あなた方が草を見、パンを食べるとき、麦畑の穂の中の何をあなた方は食べるのですか。私の体を食べるのです。あなたがたが植物の汁を飲むとき、何を飲むのですか。地球の血を、私の血を飲むのです」。

 この言葉は、この間まで読んでいた『シュタイナー ヨハネ福音書講義』(ルドルフ・シュタイナー著  高橋巌訳  春秋社)の中に書かれてあった言葉なのです。キリストがごく親しい弟子たちに向かって、内輪の集まりで語った言葉だというのです。

 今年のクリスマスを迎える頃「仏教園で、クリスマスを祝うのはどうなのか?」という質問を受けたことがありました。このことがきっかけで、『仏陀からキリストへ』(R・シュタイナー著 西川隆範編訳)などのシュタイナーによって仏陀とキリストの関連が書かれていると思われる本を、手持ちの本の中から探し出して、その視点から読み直していた中の一冊だったのです。

 ―岩石、植物、動物から成る地球体の中に住んでいる地球の霊と魂こそがキリストなのです。キリストは地球の霊なのです。
「あなたがたの体の中には、魂が生きています。地球も同じです。あなた方の肉の中に生きている霊は、肉の霊であるだけでなく、地球全体の霊でもあるのです」。
キリストは自分の真の体が地球なのだと語ったのです。
この言葉は文字通り受け取らなければなりません。
人間は地上のパンを食べ、足でこの地上を歩き回ります。地球が地球霊の体、つまりキリストの体であるなら、人間はキリストのパンを食べ、足で地球の体を、つまりキリストの体を足で踏みつけているのです。―

 「ゴルゴタの秘儀」と言われていて、イエス・ キリストがイスラエルのパレスチナのゴルゴタの丘で磔刑になった時、イエス・キリストの血がその傷から地球に流れ出たことによって、その瞬間に、以前はもっぱら太陽から地球に光となって流れ込んでいた力と衝動とが地球そのものと合体し始めたことによって、地球全体のオーラの色が変わり、霊的に変化したといわれているのです。

 キリストの傷口から流れる血は、人間だけでなく、宇宙にとっても重要な意味を持っていてその血は、地球の進化を促進する力であるというのです。

 ヨハネ福音書のこの深い意味を理解する人は、自分の物質体が地球の物質体と結びついているだけでなく、自分の霊的、魂的な本質がキリストである地球の霊的、魂的な本質とも結びついていると、感じるというのです。地球の霊であるキリストが、体である地球を貫いて流れているからだというのです。

※キリスト者共同体の司祭でおられる、ハンス=ヴェルナー・シュレーダー氏の2001年の来日講演の講演録『イースターの秘密』(小林直生 訳 涼風書林)には、こうも書かれています。
※「キリスト者共同体」ルドルフ・シュタイナーの助力を得て創立されたキリスト教運動