宅配サービス「ウーバーイーツ」は瞬く間に広まったのに、海外では普通に使えるウーバータクシーが日本ではなかなか普及しない。問題はテクノロジーではなく、社会の側にあるのではないか。新しいテクノロジーを社会に実装する(広める)ための方法論を提示した本書は、ビジネスマン、政治家、行政マン、NPOや市民活動に携わる人々にとって必読の一書だ。

 ウーバータクシーが普及しない理由は法規制や国・業界団体との調整不足などが指摘されるが、本書は「公共交通網やタクシーが発達する日本では、そもそも市場に大きなニーズがなかった」との調査結果を示す。テクノロジーの社会実装には、まずデマンド(需要)が前提となるということだ。

 そのうえで「インパクト」「リスク」「ガバナンス」「センスメイキング」の4原則が必要になるという。グーグルが「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」という目標を掲げたように、長期的な理想であるインパクトを設定する。事故や副産物といった、実装に伴うリスクを勘案する。電子署名の導入に法改正が必要なように、法律や社会規範などのガバナンスを相互作用で変えていく。そして関係者にセンスメイキング(納得)してもらう――。

 本書の特長は、まず豊富な事例にある。ドローンや接触確認アプリなど古今東西の身近な成功例と失敗例を挙げているため、専門用語や抽象的概念も具体的にイメージできる。第二に社会実装のための手順やツール、留意点を記し、極めて実践的である。第三に文章が論理的で分かりやすい。

 デジタル技術が社会に浸透する現代、社会変革はテクノロジーと不可分の関係にあり、テクノロジーは社会変革なしには活用されないことがよく分かる。そして本書が社会実装のため掲げた4原則は、個人が自分の思いを社会で実現していくためにも必要な要素なのではないかとも思った。本書を類例のない自己啓発書として再読してみたい。

(英治出版 2200円+税)=片岡義博