ダイセンに出向し、机の天板の仕上げ作業などに励むたごころ農園の社員たち=福井県若狭町のダイセン若狭工場

 新型コロナウイルス禍の雇用維持に向け、人手が過剰な企業から不足している企業へ出向する「雇用シェア」。福井県は全国に先駆けて関係機関と協議会をつくって促進し、徐々に広がりをみせている。取り組む企業は人手の融通だけでなく、社員の成長や組織の活性化など多くのメリットを感じている。出向中の社員からも「経験を本業に生かしたい」などと意欲的な声が聞かれる。

 農業法人のたごころ農園(若狭町)は昨年12月から今年3月までの予定で、社員4人を事務用家具製造のダイセン若狭工場(同)に派遣している。例年、稲作作業がない農閑期は機械整備などを行っていたが、全社員が終日携わるほどの業務量ではなく、モチベーションの維持も課題になっていたという。

 農園の倉谷正典代表(46)は以前から、冬季に何か社員の経験につながることができないかと考えており、雇用シェアを行うことにした。関係機関を通じてダイセンを紹介され、勤務体系や賃金などを調整して出向が実現した。

 出向しているのは30~40代男女4人で、週3~4日出勤し机の天板を作る作業に従事している。その中の1人の男性(42)は、倉谷代表から出向を提案された際の抵抗感はなく「農園の仕事がないのだから頑張ろう」と前向きに働き始めた。これまでは農業一筋で「異業種を経験できてよかった。いろいろ吸収して、直接的ではないにしても何か本業に生かしたい」と話す。

 倉谷代表は「新たな環境で働き、社員たちの視野の広がりを感じている。まさに『生きた研修』で、成長に少しでもつながれば。農園にとっても新たな収入源となりありがたい」とメリットを強調する。

 ダイセンは新年度を控えたこの時期が繁忙期で、例年は人材派遣に頼っていたが、人手の確保は年々厳しくなっていた。金村誠一工場長(70)は「体力もやる気もあって助かっている。他の社員の刺激にもなっている」と歓迎。近隣の企業同士で出向が実現し「人手の過不足について情報のマッチングが大事だと実感した」と、関係機関による仲介の重要性を指摘した。