【論説】会食件数は延べ39件にも上り、「接待漬け」といわれても仕方がないだろう。

 菅義偉首相の長男が勤務する放送事業会社「東北新社」による接待問題で、総務省は既に判明した幹部4人以外に9人、計13人の職員が接待を受けていたことを明らかにした。13人のうち11人について国家公務員倫理規程上の「利害関係者からの接待」に該当するか、その可能性が高いと認定したとされる。

 問題は、衛星放送などの許認可に関して接待の見返りに便宜供与があったのではないかとの疑念が拭えないことだ。放送行政がゆがめられていたとすれば、首相の進退にも関わる重大な事態と言わざるを得ない。それなのに総務省は24日にも調査結果と処分を公表する方向で調整しているという。内部調査で済ますことなどはあってはならない。検証委員会を設けるなど厳格な調査で責任の所在を明確にしなければならない。

 既に判明していた4人のうち、秋本芳徳情報流通行政局長=20日付で官房付=は許認可権を持つ衛星放送などの話題が出たかどうかに関して「記憶にない」とかわし続けてきた。だが、週刊誌による会食時の音声公開で「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と答弁を変えた。「記憶にない」で早期幕引きを図ろうとしたこと自体が、虚偽であると国民は見抜いている。

 首相の長男は総務省から衛星放送の認可を受けている東北新社の子会社役員も兼ねている。幹部4人との会食が集中した昨年12月は認可の更新時期であり、便宜を図ったとの疑念を呼んでもおかしくない。しかも接待はそれ以前から続いており、会食と東北新社絡みの許認可に関わる時期なども精査する必要があろう。

 首相は22日の衆院予算委員会集中審議で「長男が関係し、結果として公務員が倫理規程に違反する行為をしたことについては心からおわび申し上げ、大変申し訳なく思う」と陳謝した。一方で、長男が東北新社に就職する際に総務省絡みの案件について「(関わらないよう)くぎを刺した」とも述べた。なぜ長男が接待に関わるようになったのか、首相は長男をただすべきだし、それができなければ長男の国会招致に応じるべきではないか。

 安倍晋三前政権では親しい者を優遇したと指摘された森友、加計学園や桜を見る会が問題となったが、今回の接待問題も同じ構図だ。人事権を含め総務省に絶大な影響力を持つ菅首相に、官僚が忖度(そんたく)した結果が長男らとの会食だろう。調査結果を急ぐのもまた忖度ではないか。首相は真相の徹底究明を指示すべきだ。そうでなければ行政への信頼を取り戻すのは難しい。

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