店内で開かれた飲食イベントに訪れた客に笑顔で接する高野哲矢さん(右)=福井県小浜市白鬚のセレクトショップ「TEtoKI」

 温かみのある木製の棚に、体に優しいオーガニックのお菓子や食材が並ぶ。福井県の小浜市まちの駅にある暮らしのセレクトショップ「TEtoKI(てとき)」。こだわりの野菜などを使ったカレーの飲食イベントに、住民たちが集まってきた。店長の高野哲矢さん(36)=東京都出身=が人なつっこい笑顔で出迎えた。

 前職は都市計画プランナー。都内の事務所に勤め、全国のまちづくりに携わった。2018年、妻の出身地の小浜市に家族で移り住んだ。まず肌身に感じたのは人の魅力。塗り箸職人、多品種少量生産の農家、近所のお年寄り…。「都会で注目されるようなスーパースターじゃなくても、愚直に仕事をしていて自慢したくなるような『ローカルヒーロー』がたくさんいる」

 店には「地元の人が欲しいものを置きたい」と、日常に彩りを添える品々を集めた。人の触れ合いや暮らしの楽しさを感じてもらえる場にしたかったからだ。働きづめだった東京時代よりも、「一人一人の顔が見える」風景を心地よく感じている。

 小児ぜんそくを患っていた幼少期。高野さんは息苦しさの中で人の生死を意識し「人間はどうすれば自分の生きた証しを残せるのかと考えた」。たどり着いた答えは建築。阪神淡路大震災後の復興への取り組みを知り、建築物と空間の関係に興味が湧いた。大学で都市デザインを学び、東京都内のコンサルティング事務所に就職。全国の自治体の景観ビジョンや公共空間の活用を手掛けた。

 14年、小浜市出身でデザイナーの妻真由美さんと出会った。里帰りする中で、海と山が近く、自然が豊かな小浜の魅力やその温かさに気付く。小浜のためにできることは何かを考えるようになった。