波を受けて浸水し帰れなくなったミニボートの救助状況(2020年4月、福井県敦賀市)

「もーすぐ はーーーるですねぇっ!♪」
と、いうことで、最近は暖かい日もちらほら、確実に春の訪れを感じる今日この頃。
海のレジャーを趣味とされている方は、春の訪れを今か今かと待ちわびていることでしょう。
私は花粉症なので、まだしばらく冬でいいんですが・・・

さて今回は、前回に引き続いて海でのルールやマナーのお話をしたいと思うのですが、ルールとか、そういう堅い話をされるとしんどいですよね。私もそうです。聞いてると寝ちゃいそう。
ですが、どんなことでもまずは基礎知識を学ぶことから始まりますよね!好きなことならなおさら勉強しておかないと思う存分楽しめません。
海が大好きな人やこれから海で楽しもうと考えている人は、春に向けてちょっと読んでみてください。

最近は、免許などの資格が不要で、金銭的にも比較的手軽に海の上で遊ぶことができるアクテビティが特に人気です。
手漕ぎボート、カヤック、SUP、ミニボート。
<※「ミニボート」とは、船外機などの動力を用いる船舶のうち、船体の全長が3メートル未満で、かつエンジンの出力が1.5キロワット(2馬力)未満のものをいいます。>
免許が不要ということは、つまり海や船の知識が全く無くても大海原で遊べてしまうということ。
ですが、海は常に危険と隣り合わせ。免許は不要でも知識までも不要というわけでは決してありません。

今回お話ししたいのは、海の上で遊ぶときの「見張り」の大切さです。
「見張り」を行うことは海での安全上最も重要なことで、見張りとは言っても「目で見る」だけでなく、近くを走る船の音などを「耳で聞く」ことや、風や波の向きや強さを「感じる」ことなど、様々な手段や方法で常に適切に見張りを行って、迫りくる危険を察知することが求められるのです。

海の上では、手漕ぎボートであっても、プレジャーボートであっても、大型タンカーであっても、一般的にその関係性は対等とされています。
例えば海の上で止まって釣りをしているときでも、近づいてくる方が避けてくれるだろうと考えるのは間違いで、止まっている側にも危険を回避する行動をとる義務があります。
基本的に海の上は車と違ってどこを走っても自由なので、海の上で安全に止まっていられる場所など無いのだと考えておいたほうがいいでしょう。
決して遊びだけに没頭するのではなく、常に周りの状況に気を配っておかなければなりません。

気を付けなければならないのは、船だけでもないんです。
海の上でこわいのは「波」の存在。
当然、海が荒れているときには、“出ない”のが基本中の基本ですが、海が穏やかであっても、近くを走る船から発生する「引き波」には最大限の注意を払わなければなりません。
特にボートの横側から波を受ける形となると大変危険で、転覆や浸水に見舞われ海に落ちてしまうことも。
一度海に落ちてしまうと再びボートに乗り直すのはとても難しく、命にかかわるケースもあります。
ほかの船が近くを走ったなら引き波がやってくることを見越して、ボートの先を波がやってくる方向に向けることで波をやり過ごすといった行動をとりましょう。

当然のことですが、「見張り」している“だけ”では十分ではありせん。
「見張り」はあくまで危険を察知するために行うことなので、どうやって危険を回避するのかまで、考え、調べ、練習しておくことが大切です。
そのためにも、よく発生するボート事故の事例をご紹介します。

「バランスを崩して海に転落・・・」
船体が小さく軽いボートは、復元力(船が浮かんでいる状態に戻ろうとする力)が弱く、些細なことですぐにひっくり返ってしまいます。
移動のためボートの上で不用意に立ち上がったり、かかった魚を見るために片側に寄ったり、身を乗り出したり・・・気を付けて!
小さなボートに大の大人が3人も4人も乗っているのをよく見かけます。定員などはないので何人乗っても違反になるわけではないのですが、当然、重くなればなるほど不安定になってリスクは大きくなります。
波や同乗者の動きも、しっかり見張っておくことが大切です。

「遠くに行きすぎて・・・帰れない!」
人力や出力の小さなエンジンでは、大した強さじゃないと感じる向かい風でも本当に前に進めなくなるんです。それに海には見えない潮の流れの作用などもあって、そんなに陸から遠くない場所でも帰れないということがたくさんあります。
遥か沖に出て釣りをしているカヤックやミニボートを見かけることがありますが、「沖へ行けば行くほど釣れそうな気がする」という釣り人の心理は、安全上捨てたほうが身のためでしょう。
あと、遮るものの無い海の天気は本当に変わりやすい!海の状態や天気の変化もしっかりと見張っておき、海が荒れ出す前に“潔く”帰ること。これ、本当に大切です!

パドルボートやミニボートの事故は、この2種類が大半を占めていて、毎年春の訪れとともに必ずといっていいほど救助要請がよせられます。
反面教師にして、皆さんにはこんな事故を起こさずに春からのボートライフを楽しんでいただきたいっ!

今回は、「見張り」の重要性をお伝えしましたが、本当に見張らなければならないのは、安全への配慮を怠る“よこしまな心”なのかもしれません。
「はーるを愛するひーとーはー こーころ清きひとーー♪」
春の訪れを待つ“心清き”皆さんに伝わることを切に祈っています。
私は花粉症なので、まだしばらく冬でいいんですが・・・(敦賀海上保安部・うみまる)