大学院生を主な対象とする国際軟体動物学会の学会賞を史上最年少で受賞した吉村太郎さん=福井県内の自宅

 福井大学附属中学校(現福井大学附属義務教育学校)在学中から貝類を研究している慶応大学4年の吉村太郎さん(22)=福井県福井市出身=が、大学院生を主な対象とする国際軟体動物学会の学会賞を史上最年少で受賞した。2月15日付で通知を受けた。深海の底に生息する貝類に着目し、体内に共生するバクテリアの代謝物の硫黄を使って、より硬く弾力のある貝殻をつくっていることを解明。体に有毒な硫黄の処理と活用に新たな視点をもたらした。

 深海の底には、マグマ活動で熱された水が噴き出す「熱水噴出孔」があり、熱水にはバクテリアのエネルギー源となる硫化水素が含まれる。熱水噴出孔の周辺に生息する貝は、体内のバクテリアが硫化水素を酸化させた際のエネルギーを得て生きているが、代謝物の硫黄をどう処理しているかは知られていなかった。

 吉村さんは「殻皮(かくひ)」と呼ばれる貝殻の表面部分に硫黄を排出していると仮説を立てて研究。海洋研究開発機構の潜水調査船に乗って深海で採取した貝など4種を調べたところ、殻皮はいずれも3~4層の層構造となっており、全ての層に硫黄が含まれていると確認した。

 硫黄を多く含む層ほど硬く弾力があることも解明。深海底以外に生息する貝の硫黄を含まない殻皮は、250度の高圧水で15分間処理すると形が崩れたが、硫黄を含む殻皮は崩れず、硬さや弾力の変化もほとんどなかった。

 吉村さんは「体内に残ると有毒な硫黄を殻皮に使うことで排出し、その結果、貝殻の硬さや弾力も高まった」とみている。硫黄を加えて硬さや弾力を高める「加硫(かりゅう)」は生ゴムの加工で行われるが、貝の殻皮やカニの外皮の主成分となる「キチン」に対する効果は知られておらず、「どの過程で硫黄がキチンに取り込まれるか分析を進めたい」と意欲をみせる。

 熱水噴出域は、地球で最初に生命が生まれた場所とされ、潜水調査船を持つ日本や英国で研究が進んでいる。吉村さんは英オックスフォード大に留学予定だったが新型コロナウイルスの影響で延期となり、東京大学大学院に進んで研究を続けたい考え。「将来は大英博物館の学芸員になり研究をさらに深めたい」と目を輝かせた。

 吉村さんは福井大学附属中学校2年時に発掘した二枚貝の化石を4年かけて研究し、日本古生物学会から新種と認定された。慶応高校3年時は二枚貝の雌雄に関するポスター発表で国際軟体動物学会の最優秀賞、慶応大学2年時は貝殻の強度に関する研究で日本古生物学会学術大会の優秀ポスター賞を最年少受賞した。