【越山若水】14日から始まったNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の主人公渋沢栄一を小説「雄気堂々」で描いたのが城山三郎さん。経済小説の開拓者が日本最大の経済人とその時代をひもといた▼執筆の狙いは、埼玉の外れの「血洗(ちあらい)島(じま)の一農夫」が自ら愛誦(あいしょう)した詩の一節「雄気堂々」を志して、近代日本の代表的な指導者となった秘密を探ることだった。後に秘密を端的に明かす。―人の話を心を込めて聞き、吸収し、建白書を書いた。いかなる逆境にも失われぬ初心、変わることのない性格にあった―▼近代国家づくりで渋沢が合本組織(株式会社)に情熱を傾けたことも見据え、城山さんは渋沢の人格形成の物語と同時に組織形成の物語に仕立てる。渋沢とその時代を「組織が人間を閉塞(へいそく)させた時代から人間が組織をつくる時代。動乱の中の生き方から組織を率いる生き方」と表現。経済小説家の真骨頂だろう▼さて今日、コロナ禍がテレワークなど、勤務形態の変化を促した。4月には働き方改革関連の制度改正もある。非正規社員と正社員間の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が中小企業にも適用されて、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となる▼少子高齢化に加え「新しい生活様式」をにらんで個人の人生設計、職場の組織のありようともに変革を迫られよう。「雄気堂々」から、ヒントを得たいものだ。

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