ニートの延長線上に見つけた新しい働き方【ゆるパブ】

私は大学卒業後、就職をせず何者でもない人(ニート)として、実家や友人宅を転々として過ごしていました。その後、鯖江市役所の「ゆるい移住」という企画をきっかけに福井県に移り住み、現在は会社役員として空き施設の活用事業を行なったり、別の組織で茶道用木炭の生産をしたり、また個人事業としてカメラマンをしたりと、さまざまな仕事に従事しています。こういった経歴から取材を受ける機会が何度かあり、記者の方が書いた記事にはこう書いてありました。

「人生を自分のペースで掴んでいるように感じました。」

「『働く』が、自分らしく生き続けることに繋がっている気がしました。」

なぜそういう風に見えるか。改めて理由を考えてみると、大学卒業後の「何者でもない人(ニート)の期間」が要因ではないかと思ったのです。

■何者でもない時間を過ごしていると…

ニートというとどのような人をイメージするでしょうか。『働く気のない怠け者』、『親に寄生して生活している引きこもり』。度々社会問題として取り上げられるニートですが、少し調べてみると、元々はイギリス政府機関の報告書内に記載されていた『Not in Education, Employment or Training』の頭文字を取って、NEET(ニート)と表現したようです。

僕自身の何者でもないニート期間は、まるで老後のような暮らしぶりでした(当時20代前半)。気持ちの赴くままに本を読んだり、友達と釣りに行ったり、ときには海外へ行ったり。こう言うと一見、「優雅にのんびり暮らしてやがるな。」と思われるかもしれませんが、自分の中ではそういった感覚は全くなく、折に触れて自分と向き合い、時には葛藤しながら、自問自答を繰り返していました。

最初の頃は「この期間はやりたいことを見つけるため。」などと、世間的に”受け入れられやすい”方へ捻じ曲げようとしている自分もいました。それまで学校生活や受験を通して、“正しさ”がある世界で生きてきたのですから自然なことなのかもしれません。

しかし、社会的な時間を先延ばしにして、自分の納得感を得るためにとことん深堀していくと、「自分に対する安心感」みたいなものが芽生えているのが、不思議と感じられたのです(よく言う自己肯定感に近いかもしれません)。それはある種の孤独感を伴いますが、他人との不毛な比較が少なくなり、不安とは無縁の状態でした。

また、そうして過ごす中で見つけた新たな発見や自分なりの真理を、人に伝えたくなったり、それに共感してくれる人を求めるようになったり、自然と居心地のいい場所やコミュニティを求めるような行動するようになっていました。

■一度立ち止まっても新しい事を始めやすい時代の到来

現在僕は、前述のように様々な仕事をしていますが、“自分への安心感を持ちながら、どれも居心地のいい場で”働けています(字面だけ見ると仕事が出来なさそうですが、いい加減に働いているわけではないです)。これは、最近よく見聞きする『好きなことで生きていく。』や『やりたいことを仕事にする。』という働き方とも少し違うように思いますが、こうした私の働くスタイルが、外から見ると「自分のペースで、自分らしく生き続ける」ように見えるのでしょう。

新型コロナウイルス禍の中、人々の生活様式や働き方の変化に伴い、それらを取り巻く環境も変化してきています。リモートワークの浸透により、福井県のような地方へ移住し家賃を抑えることも可能な人もいれば、シェアオフィスやシェアカーを始めとする、シェアリングエコノミーをうまく活用して様々な生活コストを抑える方法もあります。もちろん経済的に破綻しないように最低限の工夫をする必要はありますが、一時的に立ち止まっている期間だけでも生き延びる方法はいくらでもあるでしょう。

また、新卒一括採用や終身雇用が崩壊しつつある今、ひと昔前のように新卒のタイミングを逃してしまうと、完全にレールから外れてしまうようなことも無くなるはずです。コワーキングスペースなどを利用して個人で小さくビジネスを始める方法などもあります。一度立ち止まったとしても新しい事を始めやすい時代の到来です。

■その人らしい働き方に必要なこと

2021年1月31日、鯖江市役所の『選べるワークスタイル推進事業』として『THE STYLE2021』というイベントが開催されました。仕事や働き方における成功の定義や価値観が大きく変わりつつある今、ふくい・さばえに関わりながら新しい働き方や仕事のあり方に取り組んできた8名の個性的な“実践者”たちが登場し、明日から活かせるそれぞれのヒントを発表しました。作家兼オンラインサロンオーナーの公立中学教師や東大卒ゲストハウスオーナー、24歳の料亭女将などバラエティ溢れる面々の中、私もプレゼンターとして登壇し、新しい働き方について今まで考えてきたことを話させてもらいました。

プレゼンをした8名の実践者の働き方は、成功の定義や価値観が変わりつつある今を象徴するように、一人ひとり全く違った形のワークスタイルでした。しかし皆に共通していたことがあります。それは、働く中で感じた違和感に蓋をせず、自分の気持ちに正直に向き合い、行動しているという点でした。何が”正しい”のかは分からないけど、悩んだり葛藤したりしながらも、“自分で選ぶ”という行為を積み重ねた結果が、その人らしい働き方や人間としての魅力、足取りの強さに繋がるのではないかと強く思いました。

 ×  ×  ×

このコラムに対するみなさんのコメントをFacebookで受け付けています。

 ⇒ゆるパブリックの公式サイト

【ゆるパブコラム】福井の若者や学生、公務員、起業家、経営者、研究者などがゆるくつながり活動する一般社団法人ゆるパブリック(略称:ゆるパブ、2015年福井に設立)が、さまざまな視点から福井のまちの「パブリック」に迫ります。ゆるパブメンバーを中心に執筆中。

関連記事