男性が移住した鯖江市河和田地区の町並み=福井県

 福井県に移住した男性が地域になじむまでの道のりを記したコラム「福井の田舎の集落に移住 地元民に突き返された酒 打ち解けるまでのキツい洗礼」を公開したところ、読者からさまざまな意見が寄せられました。その中で福島県から福井県に移住した男性は「福井県でも地域差が多いような気がします。うまく地域とやっている人もいますよ!」との声も。今回、その男性の移住体験についてコラムを寄せてもらいました。

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 最近、新聞やテレビなどで、田舎移住でテレワーク・田舎移住で新しい事業を立ち上げた人、Iターンなどをよく見かけますが、私なりに田舎移住について体験したことを書かせてもらいます。

 私は東日本大震災をきっかけに福井の知り合いなどの縁があり、鯖江市河和田地区に移住しました。当時は、福島に戻るか迷いがありましたが、避難から3年目に鯖江市河和田地区に古民家が空いていると地元の方から紹介いただき、譲り受けました。元の家主さんは、鯖江市街地に家を建てられてすぐでしたので、運よく修理などすることなくすぐに住むことができました。元の家主さんは、良い方で畑も貸してくださったり、除雪や家の簡単な手直しなども手伝ってくれて、魚釣りに行ったりと今でも交流があります。

 私自身は、震災での避難だったために地元の皆さまに温かく迎えていただいたと感じています。もし全くのよそから来たのであれば「あの人は何のために来た」とか「何が目的なのか」と地元の人は考えると思います。記事の方はそんなことから打ち解けるのに時間がかかったのではないかと思います。

 地域の祭りやボランティアなどに参加する中で、地域のまちづくりNPOの理事を拝命いただき、いろんな活動をする中で、地域課題が見えてきました。過疎化が進んでいること、特に少子化・空き家・遊休農地・高齢化・森林の荒廃などなどを知りましたが、私にはどうしようもありません。その反面で私の場合は地元の方に温かく迎えていただく中で、地域へ恩返しがしたいという心が芽生えてくるようになりました。コロナ禍で今はできませんが、時にはお酒を飲んでまちづくりについて話し合ったりもしました。

 その中で河和田地区には移住者や希望者がたくさんいることを交流して知りました。知ってるだけで10人くらいはいます。河和田地区では、地元の伝統工芸職人や田舎暮らしを目指す若者を受け入れるだけでなく、都市部の大学生も毎年迎えています。
そんな活動をしてきましたが昨年のコロナ以来、私が運営する農家民宿ゲストハウスも新型コロナの感染拡大で一時は客足が遠のきましたが、昨年秋頃からは、コロナ渦禍を象徴しているようなお客が少しずつですが来てくれています。「大阪から田舎で農業したい」とか「印鑑作りの仕事がなくなり、漆器塗りを学びたい」、「田舎で人生探しをしたい」という人たちが来るようになりました。「コロナで夫婦喧嘩した」「日本に帰国してカナダ人の妻と田舎暮らしがしたい」なんていう人もいます。
もともと漆器などものづくり、商売が盛んな町で、熱い経営者もいます。私の感じたことですが、移住者に対しては寛容だと感じています。

 しかし出ていった人もいます。地域との相性もありますが、人との関わりが苦手な人も離れていったのかなと思います。地元民、移住者に関わらず、それぞれができることで補い合って生きていく「共助の精神」は持続可能な地域づくりに不可欠です。田舎への移住希望者がいれば、何がしたいかをよく聞き、得意なことを引き出す地域の人が増えれば素敵な地域になるような気がしています。

 全国の田舎移住の情報サイトなどを見ていると、物作りの町でも過疎化が進み河和田のような課題を抱えている地域がたくさんあります。志ある人や地域企業や自治体や志ある個人が情報発信に努力しています。その熱意からは地域の危機感をひしひしと感じますし、真剣に行動していることも知りました。田舎生活、ものづくり、テレワーク拠点、農業や林業がしたい―などさまざまなニーズがあります。そんな方たちを受け入れていくには、地域で議論することが必要だと生活していて実感しています。移住には勇気と決断が必要とされます。その決断に応えるためには、地域を挙げて空き家や仕事など他家庭菜園や有機栽培をやりたい人も意外と訪れてくれます。そういった福井の田舎に移住したいという人達を自治体や地域の人達の理解とサポート体制が必要だと感じています。コロナ渦だからこそ河和田や田舎移住したい人がいることを知り共生社会に向けてチャンスになればと考えています。

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