「映画館ならではの魅力を改めて考えた」と話す館主の根岸輝尚さん=1月20日、福井県福井市順化1丁目のメトロ劇場

 新型コロナウイルス禍で福井県内の映画館が打撃を受ける中、福井市順化1丁目のミニシアター「メトロ劇場」が2月下旬から3月中旬まで休館し、音響設備を刷新する。70年近くの歴史を持つ老舗が、「映画館ならではの魅力」という原点に立ち返り、行き着いた挑戦。館主の根岸輝尚さん(44)は「コロナ禍が落ち着いた時、最高の空間を提供できるようにしたい」と話している。

 メトロ劇場は、1950年開館の「日本劇場」を引き継ぎ、53年に開館した。116席1スクリーンの小さな劇場だが、中心市街地で長年親しまれているレトロな建物と、特色ある上映作品で県内外に多くのファンを持つ。

 以前から音響にこだわり、作品ごとに重低音や高音の響きなどを調整する時代もあった。ただ、現在の設備は古いもので50年ほど使っており、「近年の多様な表現を再現できない状況」(根岸さん)という。2016年に亡き父の後を継いで4代目館主となった後、設備の更新を考えたものの投資額が大きく踏み切れなかった。

 新型コロナの感染が県内でも広がった昨年3月以降、メトロ劇場の客足は例年の2~3割に落ち込み、4月下旬から休館。5月下旬の再開後は少しずつ回復しているが、現状でも例年の7割に届いていない。

 根岸さんは、外出自粛で家で過ごす時間が増え、手軽に映画を楽しめる動画配信サイトが普及した影響も大きいと感じている。「これまでは(古い設備でも)お客さまが来てくれたけれど今は違う」。臨場感ある音響で作品の世界観に浸り、他の観客と共有できる映画館本来の魅力を追求しようと決めた。

 新たに導入する機材は、現在の機材と比べてクリアな音質で、迫力ある重低音にも対応し、全方位から音に包まれるような感覚を味わえるという。劇場の扉を防音にし、エレベーターも改修する。

 劇場として前向きな行動を起こすことで、「(市民が)映画館で作品を見ることに対して気持ちを向けてくれたらうれしい。今後も劇場を続けていくという意思表示でもある」と根岸さん。熱い思いを伝えながら支援を広く募っている。