あわら温泉旅館を訪れた修学旅行客。食事の際は一列になり、対面とは十分な間隔を開けている=2020年9月、福井県あわら市のグランディア芳泉

 新型コロナウイルスの影響で、各校が修学旅行の行き先を福井県内に変更し、あわら温泉旅館(福井県あわら市)には福井県内外から8千人を超える生徒が宿泊した。例年は数百人なだけに、コロナ禍で苦境に立たされている各温泉旅館にとって一筋の光明といえる。北陸新幹線県内開業を見据えた誘客に加え、コロナ収束後も引き続き修学旅行先として利用してもらうためのPRが課題となる。

 ■例年の10倍

 「これまではあっても数校、数百人程度だった」。ところが昨年は状況が違い、問い合わせや宿泊予約が相次いだ。市観光振興課によると、あわら温泉旅館への昨年の修学旅行客は75校、約8300人(9月予約時点)。内訳は県内が54校、5700人、県外が21校、2600人。どちらも過去最高だ。

 このうち清風荘では、修学旅行客の受け入れは多くて300人程度だが、10倍近い約2800人が宿泊した。150~200人規模の学校は、3棟ある館のうち1棟(60部屋)を貸し切り、定員5人の部屋の宿泊を3人程度に抑えることで密集を避けた。2校の宿泊日がかぶった場合は館を分ける措置を取った。伊藤由紀夫社長は「個人客がほとんどの現状で、客室が確保できる平日の団体客はありがたい」と話す。

 グランディア芳泉では、大浴場の利用時間を一般客と分け、一人一人のアレルギーに気を使った料理などで約2200人の生徒をもてなした。「あわらの温泉文化を伝えるいい機会になった」という山口高澄常務。「旅行会社と協力し、あわら温泉をあげてPRする必要がある」と手応えを感じたようだ。

 美松では約200人の宿泊があり、生徒数が十数人の小規模な学校に対しては割引して最高級の客室を提供した。市観光協会の会長も務める前田健二社長は「今年も県内で修学旅行をしたらどうか、という声を聞く。コロナが続く限り今年も昨年のような動きになるのでは」と推測する。

 ■豊富な教材

 修学旅行の行き先を東京から県内に変更した坂井市春江中学校。3年生約240人があわら温泉旅館に宿泊し、東尋坊や越前松島水族館、嶺南の明通寺を訪れ、芝政ワールドではサプライズ花火を楽しんだ。

 同校は「イベントや部活動の大会が中止になる中で修学旅行が行えて良かった。今後もコロナの状況をふまえ、候補地として検討していく」と捉える。

 今年の修学旅行について、すでに目的地の変更を考える県外校から問い合わせが来ている。あわら温泉には10畳以上の広い部屋を確保できる旅館が多く、大きい宴会場もあるためコロナ対策を取りやすいのが背景にある。

 市観光協会の米由誠事務局長は「東尋坊の柱状節理、あわらの風力発電、嶺南の原子力発電といった教材が豊富にある福井は修学旅行に適しているのでは」と説明する。

 国の観光支援事業「Go To トラベル」の年末年始一時停止では約2万2千人の宿泊キャンセルが出たあわら温泉旅館。国の施策に振り回されている格好だが、清風荘の伊藤社長は「新型コロナが収まった後もあわら温泉に来てもらえるよう、3年後の新幹線開業を見据えて、受け入れ態勢をしっかり整えていく」と前を向く。

 修学旅行についても、あわら温泉を目的地として選んでもらうため、県内の優れた地域資源を生かした積極的なPRが求められる。