(C) 2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

 今や“若き巨匠”の風格が漂う。『新聞記者』の藤井道人の新作だ。個人的には、前作『宇宙でいちばんあかるい屋根』のような青春映画をもっと撮ってほしいと思うが、再び日本が抱える問題に切り込んだ社会派作品だ。とはいえ、テーマはあくまでも“家族”なので、『新聞記者』とも『宇宙で〜』とも共通する。

 ヤクザとして生きる道を選んだ男の20年間をオリジナル脚本で描いた作品で、1999年、2005年、2019年の3章から成る。第1章は19歳で父性と出会う青春編、第2章はヤクザ社会でのし上がっていく出世編、第3章は暴力団対策法によって一変したヤクザ社会の終末編といえる。古典的なヤクザ映画を踏襲した活劇要素たっぷりの1章と2章はシネマスコープで、人間ドラマの3章をビスタ・サイズに切り替えて描く選択が、トーンの変化だけでなく時代の変化までも視覚的に浮き彫りにして効果的だ。

 かつてヤクザ映画は、日本映画に欠かせないジャンルだった。それが、画面を活気づける定番の小道具だったタバコ同様に、ヤクザも時代劇と社会の変化を象徴する悲哀的な役回りの2つの方法でしか、もはや映画の中で存続し得ないことを宣言した作品とも取れる。「ヤクザと家族」という一見あり得ないタイトルも、『AI崩壊』がそうだったように、そのベタさが意外とヒットを呼び込むかもしれない。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:藤井道人

出演:綾野剛、舘ひろし

1月29日(金)から全国公開

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