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 小津安二郎から影響を受けたデンマークの新鋭の作品だ。酪農を営む足の不自由な叔父と27歳の姪の物語で、姪が一度は諦めた獣医になる夢を再燃させ、デートにも誘われたことで、二人だけの穏やかな日常に波紋が起きるという内容は『晩春』を、田園を捉えた風景(空ショット)は『麦秋』を思い出させる。何より全カットが固定撮影でローアングルも多用されるスタイルは、明らかに“小津調”を意識したものだ。

 小津の国際的な評価は、黒澤明や溝口健二よりも遅かったが、その分色褪せず、今も若い信奉者を生み出し続けているということだろう。本作のフラレ・ピーダセン監督は1980年生まれで、長編はまだ2作目だ。小津マネでスタートした周防正行が少しずつ小津の呪縛から解放されていったのに対し、彼は既に臨機応変で、小津調の良い面だけを抽出しているように思う。

 例えば、日常のルーティンを丹念に見せることで、小さな変化が際立つ。めったに流れない音楽は流れるだけで印象的に響き、ささやかなユーモアに大笑いしてしまう。固定画面は編集にも制約を強いるが、安定した構図を保ち、その端正な画面に計算の及ばないハエや猫がもたらすリアリティーは、独自の作家性となっている。ただし、小津が諦念のように受け入れていた時代の変化というものに、この若い監督は強く抵抗している気がした。今の時代に小津を信奉する監督だけに、懐古主義なのかもしれない。★★★★★(外山真也)

監督・脚本・撮影・編集:フラレ・ピーダセン

出演:イェデ・スナゴー、ペーダ・ハンセン・テューセン

1月29日(金)から全国順次公開

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