雪面に刻まれたトレース。頂上近くでは青空が広がった=2020年12月23日、福井県大野市の銀杏峰

 アルミ製のかんじきで、雪を踏み込む。先頭に立つラッセル役を入れ替えながら、一行は歩みを進める。白の斜面にトレース(踏み跡)が延びていく。

 昨年12月、福井県内の登山愛好家でつくる「ベルグラ山の会」の松田祐也会長(46)=福井市=らの銀杏峰(げなんぽ)(大野市、1440・7メートル)登山に同行した。出発から3時間、尾根に出ると視界が一気に広がった。

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 澄んだ空気が、尾根でつながる部子山(1464・6メートル)を浮き立たせる。木々に付いているのは通称「エビの尻尾」。強風と酷寒が創り出した氷の芸術だ。

 松田会長は言う「冬山こそが絶景」。空、雪、影、眼下の山肌。そこには、たどり着いた者だけが見ることができる「青と白と黒の世界」があった。

 銀杏峰のように、福井市中心部からでも1時間ほどで登山口まで行ける山は多い。福井は山が近いのだ。

■白銀の世界 踏み跡刻む

 太もも辺りまで雪に埋もれる。ピッケルの柄の部分を前方に突き刺し、体を寄せる。そして次の一歩。酷寒でも汗が流れる。

 松田会長は「誰も踏み入れていない場所にトレース(踏み跡)を刻むのが、冬山の醍醐味の一つ」と話す。

 大野市の銀杏峰の頂上に着いたのは午後0時半。体を一気に冷やす風が吹きつける。

 足元を踏み固め、風よけの簡易テントを張る。中には雪のテーブルと椅子を設置。昼食は雪を解かした水を沸かし、熱々のラーメンを作った。

 尾根伝いに部子山へ向かう人もいる。ただ、尾根歩きはより注意が必要だ。時には激烈な風に襲われる。風下に張り出した雪庇(せっぴ)の上を歩けば滑落につながる。

 かんじき、ピッケル、アイゼン、グローブ、防寒着…。道具が多いのも冬登山の特徴だ。福井市の専門店「遊山行」の服部佐和子さん(47)は「冬山は信頼できる道具と、それを使いこなせる自分が必要」と話す。山の天気はころころ変わり、1メートル先が見えなくなることもある。悪条件を想定した準備が身を守る。

 経験を積めばテント泊もできる。「私の登山のメインは冬。月明かりの冬山は格別」と服部さん。山は人を引きつけてやまない。

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