2018年2月の大雪で、国道8号で立ち往生したトラックの前で除雪する陸上自衛隊の隊員=福井県あわら市下金屋

 大規模な車の立ち往生など大雪による深刻な被害が今冬も起きたが、気象庁の「大雪特別警報」は2013年に導入して以来、全国で一度も発表されていない。「50年に1度の積雪」など発表の3条件を満たす状況がないためで、福井県福井市でみるとおおよそ165センチ以上の積雪が発表の前提となる。今回の大雪では積雪1メートルで市民生活がまひし、専門家は「車社会が進み、特別警報に至らなくても影響は大きい」と指摘している。

 気象に関する特別警報は6種類あり、気象庁気象リスク対策課によると、運用開始後の7年間で大雨が17回、暴風、波浪、高潮は2回ずつ発表されたが、大雪と暴風雪は一度もない。大雪特別警報を発表した場合は「可能な限り頑丈な建物にとどまり、不要不急の外出を控える」ことを呼び掛けるという。

 大雪特別警報は「府県程度の広がりを持って50年に1度の積雪となり、その後(発表後)も警報級の降雪が丸1日程度以上続くと予想される場合」に発表される。三つの条件を福井市でみると、50年に1度の積雪は「165センチ」が目安で、警報級の降雪は「12時間に30センチ」を指す。

 1981年の五六豪雪以来、37年ぶりの大雪となった2018年2月は、国道8号で約1500台の車が立ち往生し自衛隊が千人以上派遣された。連日の学校休校など生活はまひしたが、福井市の積雪は最大147センチだった。嶺南は50センチほどにとどまったため「府県程度の広がり」に至らなかった。

 04年の福井豪雨時の福井地方気象台長で、自然災害に詳しい饒村曜(にょうむら・よう)さん(69)=東京都=によると、太平洋側の雪は、日本の南岸を東に進む「南岸低気圧」によってもたらされる。ただ、雪が降るのは低気圧通過中の半日~1日ほど。特別警報の「その後も警報級が丸1日程度以上続く予想」という発表基準に当てはまらず、饒村さんは「事実上、太平洋側で大雪特別警報は出ない」とみる。

 実際、山梨県甲府市では14年2月、わずか半日ほどで過去の観測史上最大の積雪49センチを超え、さらに半日で114センチにまで達した。その後は雪が急激に弱まり、特別警報は出なかった。

 気象庁は発表条件を満たす例として、全国で死者・行方不明者231人、民家の全半壊1735棟に上った1963年の三八豪雪(福井市で積雪213センチ)や、81年の五六豪雪(同196センチ)を示している。

 饒村さんは「当時に比べて今は車社会が進み、雪の影響は大きい」と指摘。「特別警報に至らなくても短時間に50センチほど積もれば道路はまひする。食料などの物流も定時に定量のものが届き、在庫を極力抱えない社会になっているため、生活に深刻な影響が出る」と解説する。