嶋田亮さん(手前)が編集したリモートアカペラの映像=福井県福井市

 目を閉じて、大きく深呼吸。この瞬間、自宅の一室がレコーディングスタジオに変わる。スマホの向こうにお客さんの姿が描けたら、ステージの幕開けだ。

 福井市を拠点とするアカペラサークル「SingRing(シングリング)」は、個々が収録した動画や音声を編集して一つの作品に仕上げる「リモートアカペラ」を取り入れ、新型コロナウイルスが広がった中でも歌を楽しんでいる。

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 「どんな響きになるんだろう」「仲間の声はどんな感じだった?」…。福井市の女性(25)は録音の際、さまざまな思いが交錯した。自然に右足でリズムを刻み、感情に合わせて手が動いた。

 完成した動画では、独りぼっちの歌声が集まり、いつものように重なっていた。「一つの作品になるのがうれしい。思わず涙があふれた」。リモートアカペラを通じて、歌の持つ力をあらためて感じた。

 腹にぐっと力を込めて放った歌声を、イヤホン付属のマイクが捉える。機材は伴奏用、録音・撮影用のスマホ計2台があればOK。コロナ禍で注目されるようになったリモートアカペラは、手軽さも魅力だ。

 女性は「完成した動画で久しぶりに顔を見た仲間がいた」と振り返る。時間や場所に縛られない利点から、普段は練習に参加できない多忙な人や、元メンバーら県外に転出した人にも間口が広がった。

 シングリング初のリモートアカペラとなった「パプリカ」では25人が歌い、「頑張ろう福井!」のエールを込め2020年5月に動画投稿サイトで公開。視聴回数は1500回に上る。

 編集したのは、サークル代表の嶋田亮さん(27)=同市。パソコンのソフトを使ってパートごとに声やテンポを合わせていく。「今そろった!」を積み重ねる地道な作業だが、一人一人の声をじっくり聞くことができ、「埋もれていた声や個性に気付いた」。バンド(6人程度)の規模なら、スマホで編集できる。

 動画の公開後、音楽の輪を広げようと募集したコラボレーション企画には19人が参加。会ったこともない人がハーモニーに加わり、ピアノやホルンの音色が彩りを添えた。これからも大切にしたい、新たなつながりが生まれている。

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