盛大なブーメランを覚悟して言うが、もうちょっとなかったのかな、ペンネーム。というのがカレー沢薫に抱いた第一印象だった。あまりにパンチが効きすぎて、探してないのに書店でやたら目につく始末。なので、ずいぶん前から知ってたような気になっていたが、今回初めて手に取った。

 漫画家兼コラムニスト兼無職だという著者による悩み相談をまとめた本書。WEBマガジン「キノノキ」にて連載されていたコラムに加筆・修正したもので、「対人関係の悩み」「性格と仕事の悩み」「趣味と生活の悩み」の三章によって構成されている。

 マウンティング上司への対処法、セフレを断つには、仕事がうまくいかないのは私がブスだからか、自己嫌悪の癖を直したい、DB(ドスケベブック)の隠し方、あんこ大戦争に巻き込まれたら……誰もが一度は通ったことがある(?)問題を、カレー沢は独自の表現で整理し、解決策を提案する。

 例えば「元カノに未練たれながしの彼氏をどうしたらいいでしょうか?」という質問に対して「『私といるとき元カノのことをにおわせるな』と言っていい」と言う。その上で、「あなたを嫉妬させて気持ちを確かめる『試し行動』」をしている可能性を指摘する。であれば至極面倒臭い男だが、本来「『付き合う』ということは『相手の面倒臭さに付き合う』」ことであり、「人間誰しも『このPDFを印刷したのち、写真に撮って、それをスキャナで取り込みエクセル貼り付けてくれ』みたいなことを言いだす時があるのです」と言う。

 め、、、名言じゃないですか!!?血圧上がるわ。膝叩きすぎて皿割れそう。こんなふうに、例えの秀逸さが眩しすぎて直視できない瞬間が多々あった。

 自己肯定感について語らせたら「ブスでも親戚中から『よっプリンセス!脂身食うか?』と扱われれば、自己肯定感は育ちます」と語り、義両親との関係に悩む相談者には「ポテトチップスが好きなら、そのじゃがいもを作った農家のおっさんとも仲良くしなければいけないということありません」と答える。控えめに言って天才。

 しかし。本書の魅力はそこだけではない。相談者に対して、劇的な大改造を提案しないのだ。自己肯定感が低く、褒められても疑ってしまうという相談者には、「あなたやるべきなのは自己肯定感を高めることではなく、むしろ『猜疑心』を大切にすることでないでしょうか」と答え、疑う心を持つことのメリットを挙げる。また自分の精神年齢の低さに悩む人には、たとえ成熟していなくても「我々は誰かのヒーローなのです」「胸を張っていきましょう」とまで言い切る。

 あなたが足りないと思うあなたは、すでに色々なものを持っている。カレー沢が一貫して伝えたいことはこんなことなのかもしれない。ふざけた名前にふざけた文章だが、バカバカしさの皮を被った真摯な一冊だった。

(太田出版 1300円+税)=アリー・マントワネット

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