プロペラに絡まった塩ビパイプ=2020年12月、福井県坂井市三国町沖海上

2020年12月末、福井県坂井市三国町沖の海上で、釣りをしていたプレジャーボートのプロペラに漂流物が絡まり航行できなくなる事故が発生し、巡視艇によって救助しました。

世間では年末年始の休暇に入った12月末の午後3時ころ、第八管区海上保安本部の運用司令センターに「海上でプレジャーボートのプロペラに“塩ビパイプ”が絡まり航行不能となっている。救助願う。」という内容の118番通報が入り、三国町沖の海上を管轄する福井海上保安署に救助の指令がありました。

「“塩ビパイプ”が絡まる?」

船のプロペラに漂流しているロープや網を巻き込んでしまう事故は、海上ではよくあることなのですが、硬い塩ビパイプを巻き込んで絡まるというのがいまいち想像できない・・・
ですが、事故当時の海上は時化模様。海が時化ているときは潮の流れの作用から普段よりも漂流物が多くなり、船舶の運航には細心の注意を払う必要があります。
どこから流れてくるのか、網やロープ、大きな木や粗大ごみなど、小型の船が不用意に走っていれば、これらの漂流物に絡まったり衝突したりして、重大事故になりかねないのです。

時化た海の上で船のコントロールができないというのは非常に危険な状態で、衝突や乗揚げ、転覆などの二次災害の発生や人命への影響が危ぶまれ、福井海上保安署からは巡視艇あさぎりを発動させ直ちに現場へ急行しました。

午後4時過ぎころ、事故船舶のもとに到着し、乗船者4人にケガなどがないことが確認され、ひとまずは安心。ですが、現場の海上は風がかなり強くて波の高さが約2メートルと大きく、救助活動も予断を許さない状況。
事故船舶の後方には、絡まった塩ビパイプの端が海面から突き出ているのが確認でき、本当にこんな硬いものが巻き付くんだなぁと、レアなケースを目の当たりにしました。

過酷な海の状況の中、巡視艇と事故船舶とをロープで繋ぎ合わせて、最寄りの港まで引っ張りますが、事故船舶が比較的大型のプレジャーボートであったことと、海が荒れていたことなどから、スピードを出して引くことが安全上困難な状況であり、その速力は時速5~6キロメートルほどとかなりの低速。救助活動は夜間に及び、救助開始から約6時間後の午後10時前ころ、ようやく岸壁に事故船舶を着岸させ、乗船者4名も全員無事に救助を完了したのでした。

事故を起こしたプレジャーボートの船長さん(60歳代・男性)に事故の経緯を聞くと、石川県の港から出港し、早朝から三国町沖の漁場で釣りをして、そろそろ帰港しようと船を走らせ始めたところ、大きな衝撃音とともにエンジンが停止。ボートの後ろ側の両横に塩ビパイプが見えたことから、船底の点検窓から確認すると、プロペラのシャフトに塩ビパイプが固く巻き付いており、自力で取れない状態になっていたということでした。

海は陸と違って、進行方向の海面下に潜む漂流物などの障害を確認することが困難です。
そのため船の操縦は、周囲の見張りを常に厳重にして慎重に行わなければなりませんが、海が時化ているときに、うねる波間の障害物を発見して対処することはとても難しいものです。
まだまだ冬の日本海の時化模様は続きますが、「この日しか仲間との休みが合わない」などというような理由で、「これぐらいの荒れ模様なら大丈夫“だろう”」「本格的に時化る前に帰れば大丈夫“だろう”」と安易に考えて無茶をしないようにお願いします。
“だろう”っていうのは何に付けても危ない考え方。「だろう航行」マジで危ないです。
「事故を起こす危険がある“かもしれない”」と常にリスクを意識して行動することが重要で「かもしれない航行」を心掛け、もしもの時には、海上保安庁の緊急通報番号「118番」に連絡してください。

昨年の年末ジャンボ、「今年こそは当たる“かもしれない”」と思って買いましたが、見事に当たりませんでした。
宝くじも漂流物も“かもしれない”と思っていれば“当たらない”んだなぁ
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現場からは以上です。(敦賀海上保安部・うみまる)