薬剤師に渡された小林化工からの文書。被害を受けた男性は「仕事が満足にできず、生活も厳しくなった。悔しい」と心情を語った=静岡県の自宅(本人提供)

 いつも通りに食後に薬をのんで車で出社した。普段と変わらないつもりが、職場で「目がうつろだ」「ろれつが回っていない」と指摘され、救急搬送された。10月26日のことだ。当時の記憶はほとんどない。睡眠導入剤成分が混入した小林化工(本社福井県あわら市)の経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」を服用した静岡県の会社員男性(57)が、自らの健康被害の体験を福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に語った。

 ■入院中は車いす

 「意識ははっきりしているのにふらつき、立ち上がると勝手に2、3歩前に出てしまう。入院中は車いす。検査では原因が分からず、怖かった」―。男性は自分の身に起こった異変を振り返る。めまいを抑える薬などを処方され、11月6日に退院した。

 混入問題が明らかになった後の12月7日。薬剤師から「イトラコナゾールの服用を中止して」と電話があった。販売元から薬局に連絡が来たのだった。

 男性は肺がアスペルギルスというカビに侵され、血痰(けったん)とせき、息苦しさなどの症状がある。昨年4月に入院し、右肺の3分の2を切除するなど計4度の手術を受け、今年2月に退院した。背中や胸の手術跡が痛み、右手はうまく動かせなくなった。

 イトラコナゾールはこのアスペルギルス症を治療するため、約2年前から服用している。医者から「再発防止のため、一生のまなきゃいけない」と言われている。

 ■治療のはずが…

 問題の錠剤は10月15日に処方され、毎朝4錠服用していた。睡眠導入剤成分は1錠当たり最大投与量の2・5倍が混入した。男性は毎日、10倍の量をのんでいたことになる。

 救急搬送までの1週間は、半日会社で寝ていたり、フラフラになり車で家に送ってもらったりということが続いた。何度も同じ用件で弟に電話した。しかし、自覚はなく記憶もあいまいだという。

 薬局を通じ、小林化工から被害者に宛てた文書を受け取った。フリーダイヤルにかけると、相手は「すみません、すみません」と繰り返した。服用の時期や症状などを聞かれた。

 会社は鉄スクラップを扱っている。救急搬送後、危ないからと言われ、割のいいトラックでの運搬の業務ができなくなった。仕事は限られ、給料は激減した。持病のため会社に立て替えてもらっていた社会保険料などの支払いが、まだ数十万円残っている。怒りがこみ上げた。

 「2年も満足に仕事ができなかったところに、追い打ちを掛けられた。治療のためにのんでいたのに…。本当に悔しい」と、やりきれない思いを吐露した。

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