水面鏡の湖を静かに進むカヤック=11月13日、福井県若狭町の水月湖

 巨大な鏡が目の前に広がった。福井県の美浜、若狭両町にまたがる三方五湖の一つ、水月湖。澄んだ空、ふわふわと浮かぶ雲、梅丈岳などの周囲の山々が映り込む。湖面の空を切り裂くように、1艘の黄色いカヤックがゆっくりと進んできた。

湖上を静かに進むカヤック=福井県若狭町の水月湖

 パドルで漕ぐのは若狭町の田辺一彦さん(49)。「水紋が流れていって、すーっと消えていくのがすてき」。カヤックの切っ先やパドルが奏でる水音がBGMだ。

 バババババッ。何羽もの水鳥が湖面で駆けっこをするように飛び立つ。驚いた魚が2匹、バチャンと跳ねた。田辺さんは「鳥や魚の目線でモノが見える。気持ちいいですよね」と笑った

しずくと静かに進むカヤック=11月13日、若狭町の水月湖

 田辺さんは自然体験型観光を展開する民間団体「自然に大の字 あそぼーや」を2002年に立ち上げた。三方五湖や若狭湾周辺をフィールドに、カヤック体験だけでなくサイクリングやマラソンの大会も企画してきた。「四季折々に景色が変わる。そのときどきに海、湖、山の全てが楽しめるのがこの地域のいいところ」

 春は満開のソメイヨシノを湖上から楽しみ、夏にはうっそうとした木々のトンネルをくぐる。「三方五湖での体験は、ディズニーランドも吉本新喜劇もまねできない」と胸を張る。コロナ禍の中、湖上の“疎”を楽しもうと、例年より多くの人が訪れていると感じている。

■カヤック体験 県内各地で

 カヤックを体験できるフィールドは、三方五湖以外にも県内各地に点在する。

 大野市の九頭竜湖は、ダム湖としては国内有数の広さが特長。瀬戸大橋のモデルにもなったつり橋「箱ケ瀬橋」をくぐることができる。坂井市の龍ケ鼻ダムは、カヤックでしか行けない「秘境の滝」が見どころ。小浜市のシーカヤックツアーでは、フグやタイの養殖いけすで餌やり体験を楽しめる。