小林化工の多重ミスのイメージ

 小林化工(本社福井県あわら市)が製造した爪水虫などの治療薬イトラコナゾール錠50「MEEK」に睡眠導入剤成分が混入した問題で、同社は原因について「原料を取り違えたヒューマンエラー」と説明した。最終検査でも異常が見落とされるなど、製造工程で何重ものミスや不手際が浮かび上がった。専門家は「やり方がずさんという印象を受ける。全体的に管理体制が甘かったのでは」と厳しく指摘する。

 同社などによると、混入は、加工途中に目減りした原料をつぎ足す作業で発生。同錠剤の工程は、原料の計量や乾燥、粒子の均一化など数日にわたり、有効成分であるイトラコナゾールは機械に付着するなどして目減りする。作業はチェック役と2人一組で行う規程だが、当時は1人で行っていたという。

⇒検証小林化工1_異変伝える1本の電話

 本来投入するイトラコナゾールは高さ1メートル程度のドラム缶のような容器に入っているのに対し、取り違えた睡眠導入剤成分リルマザホン塩酸塩水和物は高さ15センチほどの菓子箱のような缶。同社は「ラベルもロット番号も違う。一般的に取り違えるレベルではない」とする。工場にはバーコード管理などはなく、人の手で確認していた。6~7月の製造で、担当者の記憶もはっきりしないという。

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 最終関門である成分分析の検査でも混入は見落とされた。製薬会社で長く新薬などの研究開発に携わった村上茂・福井県立大学教授は「情報の引き継ぎなど、現場のコミュニケーションができていたのか疑問だ。間違いは起こり得ることであり、最終チェックを厳密にやるべきだ」と述べ、混入があったロットが最終検査をすり抜けたことを問題視する。

 加工途中で有効成分の量が減ることはあるとして「あらかじめ多めに投入すれば済むこと。コスト抑制のため有効成分をぎりぎりの量にして後でつぎ足していたのかもしれないが、本来はやらない行為。工程が増えれば、その分エラーは起きやすくなる」と話す。

 実際、原料をつぎ足す行為自体が厚生労働省が承認した手順にないことも判明。同社幹部は「管理側と現場とで認識の違いがある」と釈明し、第三者機関を通じた調査で明らかにしたいとした。

 工程・品質管理を問われるミスがいくつも重なり、問題のロットは全国に出回った。大手製薬会社幹部は「自社で睡眠導入剤も製造しているが、原料の管理は厳重だ。なぜいとも簡単に間違えたのか信じられない」と驚きを隠さない。「小林化工が作っている製品を全て調べて、白黒付けないと安心して扱えないだろう」。同社製品の出荷を一時停止する製薬会社もあり、現地調査に入る会社が相次いでいる。

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 福井県は、混入があった工場を9日に立ち入り調査した。医薬品医療機器法違反などがないか調べ、行政処分を検討している。

 福井県警も14日から、工場の担当者らから混入の経緯などについて任意の聞き取りを進めている。業務上過失致死傷容疑などの適用も視野にあるとみられるが「混入と被害の因果関係を立証するには多くの裏付け捜査が必要で、相応の時間がかかるだろう」(県警関係者)とする声もある。

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 小林化工が製造した薬剤に睡眠導入剤成分が混入し、全国で健康被害が相次いだ。あってはならない誤混入はなぜ起こったのか。経緯を追い、検証した。⇒D刊に検証連載第3回