吹田英生さんの遺影を掲げる妻の栄子さん。手前のジャンパーとポーチは夫が事故当時に身に着けていたもので、栄子さんは「生きた証」として大切に保管している=12月10日、福井県内

 飲酒運転などの危険な運転による死亡事故が後を絶たない。昨年1月に酒酔い運転をしていた男の車に衝突され、夫を亡くした女性が福井新聞の取材に応じた。「一瞬にして先の見えない地獄に突き落とされた。車という凶器を使った『交通殺人』だ」。涙ながらに、今なお抱える悲痛な思いやハンドルを握る人たちへの願いを語った。

 女性は福井県内に住む吹田栄子さん(66)。昨年1月9日午前5時50分ごろ、福井県高浜町の国道27号で、当時19歳の男が酒に酔った状態で乗用車を運転。対向車線にはみ出し、夫の英生さん=当時(64)=の軽トラックと衝突した。男は自動車運転処罰法違反(危険運転致死)罪で起訴され、昨年10月に福井地裁で懲役3年6月の判決を受けた。

 事故後しばらくは、軽トラックを見かけるたびに事故のことが頭をよぎった。「肌に鋭い針が刺さるような感覚だった」という。以前は自分が車を運転することが少しだけあったが、今は一切ハンドルを握らない。

 事故からまもなく2年。スーパーなどで夫婦が買い物をしている姿を見ると「私の横には夫がいない。うらやましい気持ちになる」といい、帰り道には自然と涙があふれる。「夫と会いたい、話したい」という思いは日を追うごとに増している。一方で、飲酒運転で事故を起こした男に対する憎しみはぬぐえないまま。「人の命を奪っておいて懲役3年6月は短い。夫の命の値打ちは3年半なのか」。司法の“限界”に対してもやりきれない思いを抱いている。

 飲酒運転はいまだ後を絶たない。今年11月27日には、福井市内の男が酒気を帯びて乗用車を運転し、軽乗用車と衝突。軽乗用車の助手席にいた18歳の女子大学生が亡くなった。一時停止違反を現認した福井署員のパトカーが乗用車を追跡していた。

 吹田さんは「自分の快楽のために飲んだ1杯の酒が、幸せな家族を一瞬で地獄へ突き落とす。その認識が欠けている」と怒りを込め、人の命を奪った危険な運転には「二度と免許を取れないようにしてほしい」と訴える。そしてこう続けた。「ハンドルを握った瞬間から、人を殺すかもしれない凶器に乗っていることを理解してほしい。車は便利だけど、それだけ危ないものだから」