文庫部門1位選出を祝い、書店に設けられた販売コーナー=福井県坂井市の宮脇書店春江店

 ライトノベル「千歳(ちとせ)くんはラムネ瓶のなか」(小学館ガガガ文庫出版)は、福井を舞台にした青春ラブコメディー。福井市出身作家裕夢(ひろむ)さんのデビュー作で、宝島社「このライトノベルがすごい!2021」で文庫部門1位に選ばれた。ファンのSNSでは小説の舞台を巡る「聖地巡礼」の話題も飛び交い、漫画化作品やドラマCD、グッズも販売されるなど、人気が拡大している。

 ファンが「チラムネ」と呼ぶ同小説は、現在第4巻まで刊行。福井屈指の進学校「藤志(ふじ)高校」が舞台で、主人公の千歳朔(さく)はスクールカースト(校内序列)のトップに君臨する。周りには外見、中身とも優れた男女が集う、いわゆる“リア充”で、非モテやオタクが主人公となる話が多いライトノベル(ラノベ)で、主人公の斬新な設定が話題になった。

 1巻では主人公が2年生進級と同時に担任から不登校のクラスメートの更生を頼まれる内容。2~4巻は一転し、田舎ゆえの進路の悩みや思春期の心の揺れなど、「キラキラした千歳だけではなく、等身大の高校生たち」(裕夢さん)が描かれ人気が加速。「このライトノベルがすごい」では2020年版の19位から一気に1位に躍り出た。昨年6月刊行の初巻から4巻まで、累計20万部を売り上げている。

 裕夢さんは父の影響で小さい頃から読書好きで、純文学を好んで育ち、大学進学で上京、友人の影響で“オタク文化”にはまったという。それまで全く興味が無かったラノベについて「言葉や文章のおもしろさと、漫画のキャラクターの楽しさ、魅力が融合したジャンル」と魅力を語る。

 福井を舞台にした設定は「地方にも青春があるんだと書きたかったし、自分が多感な時期を過ごしてきた空気感を伝えたかった」と話す。放課後の遊び場やデートスポットが少ないからこそ、「人とじっくり話す時間が長くなり、ドラマがある。そこが田舎の良さ」という。

 実在する福井の店名や名物などが登場し、ファンのSNSでは「聖地巡礼」の話題も飛び交っている。漫画やドラマCDも制作され、登場人物のグッズも販売されるなど、チラムネ人気が広がっている。

 裕夢さんは「人気は非常にありがたい。登場人物の青春を満足いくまで描きたい。目指すはアニメ化です」と、意欲を新たにしていた。

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