事故現場付近の様子=2020年11月、福井県福井市

11月末、福井県福井市の磯で、釣り中の20代男性が海に転落し一時遭難する事故が発生しました。10月以降、福井県内での釣り人の海中転落事故はこれで5人目。第八管区海上保安本部管内(福井県から島根県までの日本海沿岸)では、11月に入って釣り人が死亡・行方不明となる事案が相次いでおり、釣り中の事故に注意するよう各地で呼び掛けています。

今回の事故は、風が強く波の高い時化の日に発生しました。
その日は前日に引き続いて、事故者の男性と同行者の40代男性の2人で、ショアジギングと呼ばれる岸からの疑似餌釣りでハマチなどの青物を釣るため、福井市内の磯を訪れていました。
事故者の男性は釣りの経験が豊富で、釣り初心者である同行者に釣り方を教えながら行っていたそうです。

事故者は、ダウンジャケットにスニーカーなどの軽装、しかも救命胴衣を着ていませんでした。
前日の釣りの時には着ていたけど、この日は磯に打ち寄せる波が大きくないと思って、“あえて”着なかったのだとか・・・

海の波は、一定の周期で打ち寄せてきますが、その大きさも一定とは限りません。
「一発波」と呼ばれる通常より数倍の高さの大波が、数十回、数百回のうちに一発、突然打ち寄せることがあります。

事故者は、釣りを始めてすぐ、釣道具の入っているリュックを誤って海に落としてしまいました。
波打ち際で釣竿を使って海に浮かぶリュックを頑張って引き寄せようとしていたところ、突然大きな「一発波」が磯に打ち付け、足をすくわれて海に落ちてしまったのです。
海に落ちた事故者は、着ていたダウンジャケットが海水を吸って重くなり、身動きが取りづらい状態に・・・しかも救命胴衣を着ていないため浮力もない。
磯場は波打ち際からすぐそばの海中でも深く沈み込んでいることが多く、かなり危険な状態のまま波打ち際から3メートルほど沖に流され、引き波の影響もあって岸に戻ることができず遭難してしまいました。

海中でもがく危険な状態の事故者。
運よく同行者はすぐに気が付きました。
同行者の男性、実は学校の先生で、釣りの経験こそありませんでしたが、授業をとおして海などで溺れたときの救助法として、ペットボトルやクーラーボックスなど少しでも浮力となるものを使用することを生徒に指導した経験があり、咄嗟に近くにあったクーラーボックスを事故者の近くに投げ込んで掴まらせたのです。
事故者が浮力を確保できたのを確認して、すぐさま119番通報。消防隊によって無事救助されたのでした。

同行者の機転の利いた迅速な行動によって一命を取り留めた事故者。幸い寒さを訴える程度でケガもなく助けられました。
複数人で行動していたこと、さらには、同行者に海中転落救助の知識があったからこそ命が救われたのではないでしょうか。
敦賀海上保安部では、多発する釣り中の海中転落事故を防止するために「適した服装や装備」「救命胴衣の着用」「複数人での行動」を呼び掛けています。
これを守っていただければ、事故のリスクは間違いなく減ります。

釣りを教えていた同行者に助けられた男性。
“負うた子に教えられて浅瀬を渡る”とは、まさにこのこと。
どんなことにも共通することですが、慣れてきた頃が一番危険と言います。
初心を忘れず、海では常に危険が隣り合わせだということを忘れずに楽しんでください!(敦賀海上保安部・うみまる)